- 第2話「バリアを超えてはるか遠くへ(Way, Way Out Past the Barrier)」
- 監督:デイヴィッド・ロウェリー
- 脚本:クリストファー・フォード、ジョン・ワッツ
- ユーザー評価★ 7.7/10 (IMDbより)
あらすじ
見つけた船の予期せぬハイパースペースジャンプで遠くへと来てしまった、ウィム、ニール、ファーン、KBの四人。そこに四人を密航者だと考えた船員ドロイドSM-33が迫る。だが、ファーンは機転を利かせて、自らを船長だと認めさせ強力な仲間とする。四人はSM-33のメモリーを頼りに故郷アト・アティンへ戻ろうとするがネズミが頭に住み着いていたせいか彼の記憶は欠損していた。仕方なく一行は宇宙港のポート・ボーゴへ向かう。
ついてみるとその港は奇妙なエイリアンや怪しげな雰囲気の店が立ち並ぶ海賊たちのたまり場であった。ファーンはリーダーとして振る舞おうとするが、あちこち目移りする子どもたちは離れ離れに。そして一行は衝撃の事実を知る。自分たちの故郷アト・アティンは海賊たちにとっては失われた伝説の地だったのだ。その直後、ウィムとニールが騒動を引き起こし、ファーンやSM-33は善戦するものの、海賊のブルータスやヴェインに捕らえられてしまった。
営巣に捕らえられ、SM-33も失い、故郷への道もわからず、途方に暮れる子供たち。そこに一人の怪しげな男ジョッド・ナ・ナウッドが声をかける。彼はフォースを使ってカギを手繰り寄せると、彼らに同行することを申し出る・・・
ポート・ボーゴの完成度
まず今回感動したのはポート・ボーゴの完成度だ!新しいスター・ウォーズを見せるという本作の宣伝文句にたがわず、新しいアウトローたちを描き出してくれた。今までは酒場の無法者たちが主に取り上げられていたが、今回はカリブの海賊風の海賊!雰囲気はもちろん、売春宿風のクラブや武器商人、謎の生物を売る市場など今までにないアウトローな社会がそこにはあり、その映像に引き込まれた。
巧みだと思ったのは酒とたばこを排除しているにも関わらずそれが匂わされている点だ。ウィムたちの到着早々、吐き出す人物が映し出され、飲みすぎたことが即座に連想される。そしてその直後、エイリアンはマスクで何かを吸っている。ディズニーの子供向け作品として喫煙シーンは決して出せないなど様々な制約がある中で、それを微塵も感じさせない巧みな演出で怪しげな雰囲気を作り出していた。この演出と映像を見ただけで、本作の期待度が一気に増した。これからも素晴らしい新たなスター・ウォーズを見せてくれることだろう。
ジョッドはジェダイに・・・なる!
今回の最終盤、とうとうジュード・ロウ演じるジョッド・ナ・ナウッドが登場した。多くの人が気付いている通り、ジョッドは第一話でブルータスに裏切られたシルヴォ船長その人だろう。本作はジョッドの正体が謎であることを宣伝していたが、ひとまず彼の過去は初回配信で明かされた。彼は復権を試みて財宝のありかである惑星アト・アティン出身の子供たちの手伝いを申し出たということだろう。
だが、もう一つの謎、彼がフォースを操れる理由についてはまだ明かされていない。彼は元ジェダイなのだろうか?年齢的に考えると、パダワン時代にオーダー66を生き延びていてもおかしくない。『マンダロリアン』シーズン3ではグローグーがジェダイの大人たちに守られたことが明かされており、彼もその守られた一人である可能性はある。そして、生き残るために闇に堕ちたが、子供のために再びジェダイの道を取り戻す・・・?または、野良のフォース感応者である可能性も否定しがたい。少し特別な力を使えるからうまく生き延びてきただけの邪悪な男。しかし、子供たちが求めるジェダイを演じるうちに、やがてかつて自分も憧れた本物のジェダイへなっていく・・・。
個人的には、後者の説を推していきたい。ジェダイといっても多様なものだ。サビーヌのようにフォースを使えないものもいるのならば、だれからも教えを受けずにジェダイになることに目覚めたジェダイがいてもよいはずだ。「勇気さえあれば誰でもジェダイになれる」というおとぎ話としてのスター・ウォーズの核の部分を強化するのが、本作『スケルトン・クルー』の役目かもしれない。
不気味で特異な故郷のアト・アティン
今回アト・アティンについては衝撃的な事実が明らかになった。この星は、銀河の外の人間から財宝が眠る「おとぎ話の星」だと思われている。事実を整理すると、この星は「バリア」なるもので銀河から隔絶されており、いまだに今は亡き旧共和国の貨幣を使っている。「共和国の偉大な事業のために」働く彼らはどうやら旧共和国のために働いているつもりのようだ。授業ではバリアの外についても学んでいたが、船の発進が禁止されていることや見知らぬ非人間種族を「エイリアン」と呼び驚いていたことからも、外の交流はなさそうだ。
このようなことを踏まえると、アト・アティンは一気に管理社会のディストピア社会のように思えてくる。今は亡き旧共和国のため、と子供たちに未来を捧げるように強いるさまは恐ろしい。そして、彼らは金融の勉強を主にしていたが、本当にそれは必要なことなのだろうか?孤立した社会では、農業や工業のほうがはるかに重要に思えるが・・・。もしかすると、この惑星の人々は「働く」という物語を与えられているに過ぎないのかもしれない。労働に縛り付けることで、不満を抱く余地を失わせている監視社会なのではないか。そして、ウィムの父やファーンの母も、そんな「働く物語」の被害者で・・・。そう考え始めると、各所にいるドロイドの大きなカメラ型の頭部は、監視カメラにすら思えてくる。現在、AIの台頭により「働く」という物語の意味が再検討されている中で、その文脈を利用しようとしているのであれば、すさまじい傑作になる予感もしてくる。
また、惑星の外に出ることができないアト・アティンを故郷として持つ四人の子供たちは、空を見て宇宙にあこがれたルーク、アナキン、レイとは全く違う主人公になっている。第一話ではウィムやファーンがたびたび空を見上げる描写が差し込まれていたが、あれはこの星から出ることを夢見ていたわけではない。彼らの頭上に満点の夜空が浮かび上がることはない。四人は夢見ることすら奪われた社会の子供たちだったのだ。第2話で情報が出たことで、彼らが今こうして冒険できていることは、より大きな出来事だと気づかされる。
また、アト・アティンが「おとぎ話」の存在で、「大きな価値を持つ」というのも、タトゥイーンやジャクーとは違う。おとぎ話とされているアト・アティンが実在していることを知っている子供たちはおとぎ話、すなわちジェダイの実在をより信じるだろう。そして、砂しかないタトゥイーンとは違って価値がある故郷に彼らは再び戻る強い動機を持つ(もちろんジョッドもそうしようと促すだろう)。
まだ全貌は見えていないが、「おとぎ話」というスター・ウォーズの根底のテーマは本作も貫いている。第1話と第2話はキャラの紹介や雰囲気の紹介で終わったが、話が展開していく中でどんどんと面白味が増していくであろう。
豆知識
惑星名
SM-33がアト・アティンの候補としてあげる名前には、『キャシアン・アンドー』に登場したアルダーニや、『反乱者たち』に登場したアトロンの名前が含まれている。
ティーク
渡し守として活動しているエイリアン種族の名前はティーク。レジェンズの旧作映画『エンドア/魔空の妖精』に初登場した種族で、非常にすばしっこいことで知られる。
ポート・ボーゴ
ポート・ボーゴは、レジェンズ(旧作品群)において、30年以上前に登場していた地名からの引用。レジェンズでは、ボーゴは共和国設立前に銀河を支配していた古代エイリアン帝国ラカタによって設立された植民地だった。
キャプテンEO
タトゥー
ポート・ボーゴで彫り師をしているのは、『EP6/ジェダイの帰還』で拷問ドロイドとして登場したことでインパクトを残した8Dシリーズドロイド。また、入れようとしているタトゥーはハット・カルテルのシンボルである。
独房のカギ
手が届かない目の前のカギを動物にとってもらおうと試みるのは、ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」へのオマージュか。
【ドラマ『スケルトン・クルー』のレビュー記事】
筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei)
画像は、「スター・ウォーズ」シリーズ(1977-2025年、ルーカスフィルム)より。ユーザー評価は、記事執筆時点