- 第2話「復讐/正義(Revenge / Justice)」
- 監督:レズリー・ヘッドランド
- 脚本:ジェイソン・ミカレフ、チャーメイン・デグラーテ
- 海外の反応
- 前回→ 第1話「失って/見つけて」
- 次回→ 第3話
あらすじ
惑星オレガのジェダイ寺院に侵入したメイは、インダーラに引き続きマスター・コービンを殺そうと襲いかかる。しかし、“バラシュの誓い”を立て、外部との接触を断つ彼に触れることすら叶わない。
一方、メイの双子であるオーシャ・アニセヤの無罪を証明しようとするマスター・ソルは、彼女と弟子のジェキ・ロン、騎士のヨード・ファンダーを引き連れて、殺人事件の手がかりを求めて惑星オレガに到着した。しかし、一足遅くメイのコービン毒殺を防ぐことは出来なかった。一行が到着したちょうどその時、コービンはメイに対して過去の過ちを詫びながら自殺していた。
ソル一行は毒を作り、メイに協力したと思われるカイナールを尋問する。カイナールはメイとオーシャを間違え、そのマスターである“彼”のことを口走るが、うまくはぐらかされ、結局メイを捕らえる計画に協力させることしか出来なかった。ただ、メイが18年前の事件に関わった4人のジェダイに復讐しようとしているという重要情報を手に入れた。
ソルは、家族を殺したメイに復讐しようとするオーシャを押し留め、自らメイに対峙、彼女を圧倒する。しかし、メイは自らの師について何も知らず、オーシャが生きていたことすら知らなかった。そきて、メイは、ソル、ヨード、ジェッキ、そしてオーシャの追撃を振り切り逃亡に成功する。
ソルは次の標的の見込みをつけるが、ヴァーネストラ・ロウによってコルサントに呼び戻される。一方、メイは自分を裏切ったカイナールを殺そうとするが、彼は次のターゲットの居場所を告げ、彼女をなだめた。
惑星コーファー。ガラクタ漁りが墜落した船からパーツを奪おうと画策するが、獣のような巨人に追い払われる。彼は、マスター・ケルナッカ。18年前のメイとオーシャの事件に関わった重要人物で、メイの次の復讐相手だ。
支配層エリートになったジェダイの失敗
この二話を通じて、二人のジェダイ・マスターが殺された。そして、彼らにはある「罪」があることがほのめかされた。ジェダイの黄金期は終わろうとしている・・・。第一話のレビューでは水と火に対する考え方から、ジェダイの信念の不確かさを指摘したが、今回はより直接的に彼らの驕りが描かれていた。
二件のジェダイ殺人事件で最も印象的だったのは、「メイが貧民にお金を渡すことでジェダイ殺害を成功させる」という共通点だ。第一話ではエイリアンの物乞い、第二話ではやせ細った少女に、メイは対価として金銭を払う。これは、ジェダイ支配の失敗を明示する。ジェダイは正義の為政者であるはずが、貧困にあえぐ人々に手を差し伸べられず、尊敬を集められていない。だから、明日を生きようとする人々に売られる。そのことは、今回の首根っこを摑まえるパダワンという描写でも強調された。脂肪をたっぷりと蓄えたパダワンは、やせ細った少女を乱暴に扱い、少女を悪だと決めつける。その態度では少女の心を開くことは決してできない。指導者であるマスターすらその姿勢を否定しない。
本作に登場するジェダイたちの衣装でさえ、その驕りの象徴に思えてくる。町中の人々は薄汚れた服装だが、(特にコルサントの聖堂の)ジェダイは真っ白な外套としみ一つない黄色のローブを着ている。まるで、ブルーカラーとホワイトカラーの対比の様だ。マインドトリックを「脅し」として使用した第1話のヨードからも、自分が圧倒的な強者であるという自信が垣間見える。そして圧倒的な強者であり、「ホワイトカラー」たる彼らは、自らの手で囚人の護送すらしないのである。代わりに寄生虫を利用し、囚人の人間性すら否定しようとする。
コルサントの重鎮ヴァーネストラは、早急に解決すべきこの事件に対して、内密な解決を試みる。曰く、この事件が原因で政敵に攻撃されることを危惧している。もはやコルサントのエリート官僚になった彼女たちにとって、これは身に迫る脅威ではなく、一つの政争のピースにしか過ぎない。だから、優秀なソルが自らその脅威に近づこうとすることにヴァーネストラは反対する。危険な現場の対処は、エリートたるジェダイの仕事ではなく、人材の消耗にしかならないからだ。そして、今回の最後でソルを召喚したように、ジェダイは官僚制にどっぷり浸かり、柔軟な対応は期待できない。
ジェダイは本来その光る剣によって銀河に平和と希望をもたらす存在だった。だが、力が強まるにつれ、驕りが蔓延し、その役割を中央のエリートにシフトさせつつある。結果として、多くの人間を取りこぼし、反発が生まれつつある。ジェダイがハイ・リパブリック時代という絶頂期からの転落を味わうのは当然であろう。そして、この構図は、現実世界でくすぶる「エリートとなった左派」への反発にも重なるが・・・?
18年前の罪とは?信用ならないソル
この二話で本作の根本には「18年前の事件」があることが判明した。改めてその内容を整理しよう。18年前、惑星ブレンドクにて、オーシャとメイは魔女の集団の一員だった。だが、ある火事で二人は家族を失う。"ソルの言葉によると"、それはオーシャの双子の姉であるメイが起こした火事であったが、メイは死亡した。だが、"メイの視点からすると"、死亡したのはオーシャである。おそらくはメイは自分が起こした火事だとは思っていないであろう。この一連の事件で、ソル、インダーラ、トービン、ケルナッカの4人のジェダイは評議会に隠す必要性がある「罪」を犯した。そして、ソルは生き残ったオーシャを弟子にしたものの、インダーラの反対もあり、彼女を騎士にすることは出来なかった。
この事件に関わったトービンは、自らの過ちを悔い、平穏を得ようと外界とのかかわりを断つ「バラシュの誓い」を立てた。おそらく、ケルナッカも同様の誓いを立て、森林へとこもっている。そして、トービンはメイに自らの過ちを謝罪し、死をもって罪を償った。ここまでさせるほどの罪があるはずなのに、それでもジェダイとして活動を続けるソルとインダーラはこの罪をどう捉えているのか。
少なくとも、ソルの言葉は信頼できない。トービンはメイを待っていたとその生存を知っていたのに、ソルは彼女が死んだと言い張っていた。そして、過去の過ちを学ぶことは大切だとジェキに語っている一方で、メイが双子であるという情報をあえて報告せずに「罪」をひた隠しにしているようだ。加えて言えば、「目に頼るな」と一話で語っていたソルが、第二話では「砂による目くらまし」でメイを逃がした描写も引っかかる。ソルは、本当に心優しき聡明なマスターなのか?
その事件の内容は未だに不明だが、「素手でジェダイを殺せ」というメイが受けた指令に関係していると思われる。この指令に従い、彼女は度重なる戦いで相手のライトセーバーを奪おうとしてきた。メイは第1話で「ライトセーバーを持ったジェダイは人殺し」とも語っており、つまり「人殺しではないジェダイ」に復讐することに意味があるのだろう。それが「夢」を殺すことに繋がるはずで・・・。と言いつつも、予想はつかない。ただ、ジェダイを批判する本作とはいえ、ジェダイに安直な罪を背負わせるとは思えず、『最後のジェダイ』のルークのように無抵抗な子供を殺そうとしたという展開にはならない、と予想している。
本作は黒澤明監督の名作『羅生門』に影響を受けていると明言されている。つまり、『羅生門』と同様に、それぞれが自分に都合の良い嘘、いやスター・ウォーズ風に言えば「ある視点からの真実」を語っているのではないか。主人公のソルの発言であろうと、信頼できない。
メイの正体にはさらなる秘密が?
この二話を見返していて、そしてほかのファンとの交流を通じて、だんだんとメイの正体に対しての疑念が芽生えてきた。本当にオーシャとメイは双子なのか?未だに二人同時に目撃されていないところが引っかかる。というか、「双子」だと言い張っているのは先ほど信用できないと主張したソルではないか・・・?
自分でも突飛なことは分かっているが、私はまだ「二重人格」ではないかと疑っている。オーシャが拘束されている中でメイの侵入事件が起こったことで、オーシャの疑惑は晴れたわけだが、我々は『最後のジェダイ』で自身を銀河の彼方に投影することも可能だと学んだ。もう一つ、ヨードがオーシャを見張っていて彼女が無実だと知ったという証言もあるが、これはただの証言に過ぎない。ヨードが友人であるオーシャを庇っているとすれば、覆される。(ヨードがオーシャの無罪を主張するまでやけに時間があるので、このシーンは後々にヨード視点を挿入するのに絶好であろう)
もし18年前の事件がメイという人格を「隔離」したことだとしたら、それは罪ではあるが同時にそこまでの非人道的な行為にはならないのではないか。本人同士は自分たちが二重人格だと自覚していないから、それでお互いが死んだ、と認識しているだけに過ぎないのかもしれない。この描写をするために、マインドトリックを安易にちらつかせるだの、寄生虫で精神状態を変えるだの、ジェダイは記憶を消すらしいだの、のジェダイが精神に干渉するという要素が散りばめられていたり・・・?
そして何より、本当に二重人格ならば、オーシャが死んだ/メイが死んだをアナキンは死んだ/カイロ・レンは死んだなどのスター・ウォーズの今までの二つの側面を持つ悪役と重ねることができ、ふさわしいトリックに思える。
まぁ、あくまでもここら辺は妄想の域を出ない。だが、この双子にはさらなる秘密が隠されているだろう。共犯だったり、入れ替わりだったり、まだまだありうる可能性は多くある。アッと驚く展開を私は待ち望んでいる。
魅力的な脇役
本作はメインのキャラクターもよいが、脇を固めるキャラも良い。ヨードの魅力は前回語ったので割愛するが、彼の堅物さや正義感は今後の物語に大きく関わるだろう。ジェキはマスターのことを敬愛してやまない良い弟子だ。ソルがオーシャを思い出していてジェラシーを感じつつも、彼の言葉に納得し、実際にオーシャに会えば仲良くも出来る。子どもにも優しい。ただ、自分を良く見せようとしてか、マスターに対して一歩引き、常に許可を求めるような姿勢は今度どう転ぶのか少し怖い所ではある。
カイナールも、そのテキトーさの裏に信念が見え隠れして面白い。前回チラッと触れたが、カイナールの後ろでは本作の重要要素である水の効果音が挿入されており、彼は自分が言うような便利屋ではないことが示唆されている。シス・コードの一文を引用したり、レジェンズ時代のジェダイの逸話から「記憶の消去」という出来事を引用してきていることから、只者ではない。もしかして、カイナールこそが「彼」なのか。
本作はミステリーとしても引き込まれる出来栄えだが、魅力的な脇役が人間ドラマとしての完成度を高めている。彼らがどのような道を歩むのか楽しみだ。
豆知識
惑星オレガ
オレガは、マラケシュとモロッコの鮮やかな色彩にインスパイアされてデザインされた。
門番のドロイド
オレガのジェダイ寺院の門番は門に内蔵されたドロイドが勤めている。これは、もちろん『EP6/ジェダイの帰還』のジャワの宮殿のオマージュ。
R2シリーズ
ジェキは、メイに「船外の仕事をするのはR2ドロイドだけだと思っていた」と語る。R2シリーズは、我らがR2-D2をはじめ、銀河各地で使われていた有名なアストロメク・ドロイド。『EP1/ファントム・メナス』で船外での修理を担当していたR2-D2への言及にもなっている。
「平和は嘘だ」
カイミールは、メイに対して「平和は嘘だ」と語る。これは、シスの掟である「シス・コード」の一文からの引用。ジェダイの掟を表した「ジェダイ・コード」の対比となっている。
バラシュの誓い
トービンが行っていた「バラシュの誓い」とは、周りとの繋がりを断ち、フォースに身を捧げる誓いの事で、悔悟の一環として行われていた。正史のコミック『帝国の爪牙』 に初登場し、ダース・ヴェイダーはこの誓いを立てたキラック・インフィラを倒し、自らの赤いライトセーバーを作り上げた。
「嫌な予感がする」
スター・ウォーズ映画でおなじみのこの台詞を本作で初めて口にしたのは、ヨードだった。
ハットとハット語
カイミールは「かつてハットのために働いていた」と悪名高いハット種族に言及。また、ウーキーのケルナッカに追い払われた二人組はハット語を喋っていた。
ウーキーのジェダイ
ウーキーのジェダイが実写では初登場。演じるのは映画で二代目のチューバッカを演じてきたヨーナス・スオタモ。また、その住処の看板には、ウーキーの言語シリウーク語で「立ち入り禁止」と書いている。
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