- 第1話「失って/見つけて(Lost / Found)」
- 監督:レズリー・ヘッドランド
- 脚本:レズリー・ヘッドランド
- 海外の反応
- 次回→ 第2話「復讐/正義」
あらすじ
ジェダイ・マスターのマスター・インダーラは復讐に燃える暗殺者のメイに襲撃される。インダーラは有利に戦いを進めていたが、民間人を救おうとした隙をつかれ敗北し殺害されてしまった。
一方、通商連合の“メクネック”として活動していた元ジェダイのオーシャ・アニセヤは、暗殺者と同じ顔という証言のせいでインダーラ殺害の容疑をかけられ元同僚のジェダイ・ナイト、ヨード・ファンダーに捕まる。しかし、すぐに囚人たちの脱獄に巻き込まれ、今度は逃亡犯となってしまった。
オーシャの元マスターであるマスター・ソルは、オーシャの身の潔白を信じている。重鎮であるヴァーネストラ・ロウを説得し、弟子のジェキ・ロンとヨードとともに彼女のもとに向かう。
惑星カーラックへと墜落したオーシャは、ビジョンの中で、双子の姉のメイが生きていることを知る。そして、彼女こそがインダーラ殺害の真犯人だった。ソルは、ジェキ、ヨードと共にオーシャと対面する。若手の二人はオーシャに対して懐疑的だが、ソルは彼女を信じた。そして、四人は旅路をともにすることになった。
一方、メイは赤いライトセーバーを操る“アコライト”と対面する。アコライトは語る。「ジェダイは夢の中に生きる。我々は武器を使わずに、その夢を殺す」。彼らの計画は始まったばかりだ……
最初からエンジン全開!考察を置いてけぼりに
第1話から期待を抱かせる作品だ。映像もアクションも合格点を優に超え、スカイウォーカー・サーガから離れている舞台設定にふさわしい新たなエイリアンやデザインを投入してくれた。護送船からの脱出に登場した椅子型ドロイドや奇抜なエイリアンのデザインは物珍しく、スター・ウォーズの可能性を押し広げた。
そして、予告編での活躍シーンがあまりに少ないのですぐ死ぬであろうと予想していたマスター・インダーラは、予想よりもはるかに早くタイトル前に殺された。予告編では、フォース感応者に襲われたと報告し、その師を探ろうとしていることから、ジェダイ殺害事件の捜査中に殺されると見込まれていたが、まさかインダーラ自身がその事件の発端だったとは。してやられた。
また、総指揮のヘッドランドは、アソーカ冤罪事件の『クローン・ウォーズ』S5「ジェダイの過ち」アークから影響を受けたと語っていたが、その流れもこの一話目で終わった。アナキンは崖で無罪を訴えるアソーカの落下を止めることが出来なかった。しかし、ソルはオーシャを空中で掴み、同じような悲劇へと進まない。第2話では、メイの存在が明示され冤罪は晴れた。
何より驚いたのは双子の存在を早々に明かしたことだ。これは、予告編や宣伝からもほのめかされており、ネットの「考察勢」は本作のトリックを見破ったり!と誇っていた。だが、蓋を開けてみれば、それは物語の始点に過ぎなかった。
面白いミステリーには、予想の裏切りが必要だ。今のところ、すべてがファンの予想の斜め上を行っている。ヘッドランドはファンを見事に掌で踊らせた。きっと、あの”アコライト”のマスクの下にも驚くべき秘密が隠されていることだろう。
スター・ウォーズ過去作へのオマージュ
前述したが、本作は『クローン・ウォーズ』の「ジェダイの過ち」アークのオマージュとなっている。ソルは、オーシャを救うことで、アナキン&アソーカと同じ悲劇の道を歩むことは避けた・・・ようにも思えるが、オーシャはアソーカと同じような道をたどっている。オーシャもアソーカと同じようにジェダイを離れており、それが「自分の決断だ」と言い聞かせている。そして、アソーカと同じようにメカニックとして働いている。
と、同時にオーシャはアナキンでもある。オーシャは8歳でジェダイ・オーダーに入ったそうなので、EP1のアナキンとほぼ同い年だ。そのせいで、ヨードからは愛着を持っていたのではないかと疑念を持たれている。この描写を見ると、EP1でヨーダがアナキンのオーダー入りを「年を取りすぎている」と反対したのは、オーシャのことを踏まえてなのではないか?本作にヨーダは登場しないらしいが、そんな考えが頭をよぎり、彼の確かな存在感を際立たせる。
そして、最もわかりやすいオマージュとしては、ヨード&タシの師弟の登場が、EP1のクワイ=ガン&オビ=ワンの師弟の登場と重ねられていた。どちらの師弟も乗り込むのは、通商連合のニモーディアンの船。違いとしては、ヨードたちは戦いに巻き込まれることはなかった点だ。今回のニモーディアンはジェダイを畏怖しており、すぐに艦橋に招き入れるばかりか、マインドトリックを使うそぶりを見せただけで降参する。本作の舞台が、EP1よりもジェダイの力が強かった黄金期「ハイ・リパブリック時代」であることがわかる。
細かいことをいえば、ヨードの半裸はカイロ・レンのオマージュだし、オーシャのビジョンはレイのオマージュであるが、主なオマージュは本作がプリクエル三部作の時代に繋がることを強調したものであった。EP1の100年前というのは、遠いようで意外と近い。本作の事件は、プリクエル三部作に直接関係するものであろう。
火と水と夢
今回の描写では、「火」と「水」の対比が気になった。オーシャは船の火事で「メイが起こし、家族を殺した悲劇の火事」を思い出す。ソルはジェダイの子供たちに「水の静けさ」に身を委ねるように語り、その一人が「破壊の火」をビジョンで見たことに動揺する。このように、破壊する「火」とそれを収める「水」という構図が序盤で出来ていた。
が、最後の場面。”アコライト”が赤いライトセーバーを起動するのは波打ち際だ。水面に、その赤い光が反射する。この二つは本当に対極にあるのだろうか?”アコライト”が立っているのは水で削られた岩壁で、水が破壊をもたらすことがわかる。そして、注目すべきことに第2話に登場したアコライトの協力者カイミールのシーンでも、うるさいほどに水槽の音が強調されている。
ジェダイは「水」が静けさの象徴、「火」が破壊の象徴だと考えている。だが、水も火も大きな違いはなく、見方次第ではないのか。ジェダイはその絶対的な力で正義をもたらしていると自ら信じ、それを周りに信じさせている。だが、それは「夢」に過ぎず、こちらも見方次第ではないか。”アコライト”はその夢を殺すつもりなのであろう。同時配信の第2話のレビューでは、この二話で垣間見えたジェダイの驕りについて語っていこう。
おまけ:ヨードが好き!
真面目なレビューは置いといて、ヨード・ファンダーというキャラの魅力に心を鷲掴みにされている。真面目さと不器用さ、そしてその裏にある自己顕示欲。人間らしさ全開の今までにないジェダイ像を見せてくれる。
まず初登場からいい。堂々とジェダイの力を見せつけたと思ったら、オーシャが自室に帰ってきたのを受けて慌ててベッドから立ち上がる。最初から立っていれば恰好がついたものの、物思いに耽るあまり次の展開など考えられない不器用な人間なのである。そして、半裸での謝罪の場面。まず気にするところはそこではないだろうとツッコミたくなるが、頭の中はオーシャを逃がしたことでいっぱい。ここでも、ヨードの不器用さが強調される。鍛え抜かれた肉体とローブへのアイロンがけから、彼の几帳面さもわかる。
これだけで終わらないのがヨードの魅力。第二話の作戦会議では、ジェキに対して、ソルに対して先輩でナイトである自分の威厳を見せつけようと、積極的に発言する。だが、ジェキの案が採用され・・・そのときの表情ときたら!あっけにとられつつも、バツの悪さを隠そうとする顔にグッとくる。いつもライトセーバーを真っ先に振り回して貢献しようとする姿勢からも、彼の自己顕示欲が透けて見える。そんなヨードの行きつく先が楽しみで仕方ない。彼は自分の苦悩に決着をつけられるのか・・・?
ヨードを演ずるチャーリー・バーネットは、本作の総指揮であるヘッドランドの過去作『ロシアン・ドール』でも似たような真面目で不器用で自己顕示欲に突き動かされるアランというキャラを演じていた。ヨードが好きな人は、アランにもどっぷりとハマるだろう。ぜひ一度見て貰いたい。
豆知識
ハイ・リパブリック時代
本作が舞台とするのは、EP1の100年前、共和国の黄金期と呼ばれていたハイ・リパブリック時代だ。同時代は書籍シリーズで既に描かれており、ジェダイの黄色いローブも書籍から連続した設定である。
メイの衣装
メイの暗殺者の衣装には、本物の竹で作った胸当てがあり、日本のサムライやビザンティンの戦士にインスパイアされた要素が散りばめられている。
インダーラのキャラ設定
インダーラは「オビ=ワン・ケノービと『キル・ビル』のオーレン石井を混ぜたようなリラックスしつつ状況をコントロールするキャラ」として設定される。また、彼女が殺される衝撃的なオープニングは映画『グリーン・デスティニー』のオマージュ
ナー・シャッダ
オーシャの友人は「昨晩ナー・シャッダを楽しんだ」と語る。ナー・シャッダは密輸業者の月と呼ばれる別名を持つ衛星。ハットの出身惑星であるナル・ハッタの衛星だ。
通商連合とニモーディアンとEP1
本作には、『EP1/ファントム・メナス』に初登場したことでおなじみのニモーディアンがオーシャの雇い主として登場する。そして、EP1と同様に彼らは通商連合に所属している(劇中では“Trade Feds"と呼ばれていた)。これらの構図はEP1のオマージュとなっている。
おなじみのエイリアン
今回、複数のおなじみのエイリアンが登場した。ヨードのパダワンであるタシ・ロワはザイゲリアン。ザイゲリアンは、レジェンズの設定資料から存在する種族で、『クローン・ウォーズ』では奴隷商人としてインパクトを残した。また、ソルが訓練する子供たちの中にはターサントの姿が。ターサントは、『フォースの覚醒』で新共和国の議長だったラネヴァー・ヴィルチャムの種族だ。そして、ソルのパダワンであるジェキは、『EP6/ジェダイの帰還』の歌手として登場したシーリン種族と人間のハーフだ。
ジェダイ聖堂
本作にはおなじみのコルサントのジェダイ聖堂が登場するが、プリクエル三部作の100年前を舞台としているため、少し違って見える。まだ建設中の要素があるようだ。
ヴァーネストラ・ロウ
本作で、重鎮として存在感を放つヴァーネストラは前述した書籍の「ハイ・リパブリック」シリーズにて登場していたキャラ。本作の100年前、その少女時代が描かれてきた。成熟した姿をファンは初めて目にしたことになる。
コーポレート・セクター
ヨードやオーシャは、「コーポレート・セクター(CorpSec)」の存在に言及していていた。この領域は、アウター・リムの一部であり、さまざまな大企業が広範な自治権を持っていた。1979年のレジェンズ小説からある非常に古い設定で、『最後のジェダイ』での言及されていた。
惑星カーラック
半裸
ヨードは不意の訪問に半裸で対応してしまう。これは、明らかに『最後のジェダイ』のカイロ・レンのオマージュ。
『逃亡者』
オシャが洞窟の出口の崖に追い詰められ、無実を訴えるシーンは、元をたどればハリソン・フォード主演の映画『逃亡者』のオマージュ。さらに言うと、『逃亡者』のオマージュである『クローン・ウォーズ』S5のさらなるオマージュになっている。