- 第4話「献身(Devoted)」
- 評価: ★8.9/10(IMDbユーザー評価)
- 第5話「認識(Realization)」
- 評価: ★7.9/10(IMDbユーザー評価)
- 第6話「出口(The Way Out)」
- 評価: ★7.4/10(IMDbユーザー評価)
海外の反応
「バリスの作品では、長い間見たかった尋問官バリスがやっと見られた。残念なことに、彼女とヴェイダーのやりとりはなかったけど、また彼女に会えることをとりあえず喜ぶよ」
「バリスには生き残ってほしかったけど、彼女のキャラクターにとってはベストな結末だったと思う。良い点としては、彼女がアソーカと再会したことが暗示されていて、まだ語られる可能性のあることだ」
「バリスの物語がクリフハンガーで終わったので、バリスの物語の終わりを見た後、またバリスの物語の続編を待つ時間になった」
「バリスが同じく尋問官に捕らえられていたルミナーラと交流できなかったのは機会損失だなぁ。あと、大審問官はアソーカの裁判に同席していたことをバリスに伝えればよかったのに」
「尋問官のフォース・シスターがここまで肉付けされるとは思わなかったが、本当に気に入っている。『出口』の唐突な終わり方は、衝撃的だが痛烈だ。バリスは子供をアソーカに託したのか、それともリーヴァかな?」
「バリス編も素晴らしい瞬間があり良かったが、結末を満足のいくものにするには、追加エピソードやより長い上映時間が必要だと感じた」
「バリスはタトゥイーンにいなかった割には、かなり早く老けたな」
レビュー
『クローン・ウォーズ』でアソーカを裏切り、捕らえられて以降音沙汰がなかったバリス・オフィーの物語の続編がついに登場!当時監督だったデイヴ・フィローニは「計画があるから生かした」と述べており、本作は彼にとっても念願の作品だっただろう。その内容は、バリスを救済し、レジェンズ時代から彼女を知るファンをも救済する内容だった。
第4話「献身」では、『EP3/シスの復讐』の直後から物語が始まる。捕らえられたバリスは、かつての友人がフォース・シスターを名乗り、ジェダイが滅び帝国が誕生したとのその言葉に困惑する。そして旧友にいざなわれるまま、大尋問官の選抜試験に参加し、最後は生き残ろうと必死な元同僚のジェダイをフォースで殺す。こうして彼女は、帝国の尋問官の一人となり、新たなマスターのヴェイダーに忠誠を誓う。そして、マスクの下から復唱する。「帝国に栄光あれ」。
この回は、ファンたちの妄想が報われたような回だった。ダークサイドに堕ちたバリスが帝国に加わる。そして、アソーカの友人で彼女を裏切ったバリスが、アナキンの弟子のアソーカと対になるように、ヴェイダーの弟子となる・・・。その妄想が実現した、かに思われた。実際に、尋問官として被るそのマスクは、ヴェイダーの弟子だったスターキラー卿(ゲーム『フォース・アンリーシュド』のIFバッドエンディングの姿)のマスクとそっくりであった。真っ先にジェダイの欺瞞を非難したバリスが、暗黒面へと進んでいくのは当然・・・という予想はすぐに覆される。
第5話「認識」では、バリスとフォース・シスターがコンビでジェダイ狩りを行う。フォース・シスターは村人を脅して強引にその居場所を聞き出そうとする。一方のバリスは、マスクを外して少年に優しく話しかけ、村人のために話すよう諭す。少年は居場所を告げ・・・結果フォース・シスターの激昂をもたらした。力で敬意を得るべきだと考えるフォース・シスターは村人を皆殺しにした。バリスはやるせない気持ちになりながら、次は逃亡ジェダイを救おうとする。疲れ果てたジェダイの心は彼女になびくが・・・フォース・シスターに腹を貫かれた。バリスは決意を決める。自らジェダイを名乗り、フォース・シスターを撃破した。こうしてバリスは帝国と決別し、腹を貫かれたジェダイの治療を試みる。
5話にして、いきなりバリスが帝国と決別したのは予想外であった。ファンが期待したヴェイダーとバリスの会話すらなかった。正直この早々の出奔は、尋問官になるという意味を弱めるように感じ、残念な展開だった。思想犯であるバリスは、きっと帝国と親和性のある考えを持っているはずだが、まったく説得はなかったのだろうか。尋問官も、親玉のヴェイダーも「力で敬意を」などと考える脳筋だから人心掌握なんてできるはずもないか・・・助けてパルパティーン!にしても、フォース・シスターや大尋問官があれほどヴェイダーを恐れているのに、バリスにまったくその恐怖が植え付けられていないのは際立ち、ヴェイダーは何やってるんだ、と嘆いてしまった。
が、腹を貫かれたジェダイに対して、バリスがフォース・ヒーリングを使おうとする描写はテンションが上がった。そうバリスとは、ヒーラーなのだ。レジェンズ(旧設定群)の小説では、彼女のヒーラーとしての活躍を主軸に置いた長編小説まである。バリスの初登場レジェンズ小説である『崩壊の序曲』で彼女を知った身である私は、『クローン・ウォーズ』でそれが無視されていることに大きな落胆を覚えていたので、フィローニがレジェンズ小説のことも忘れていないと知ることが出来て嬉しかった。
第6話「出口」では、フォース感応者の子どもを持つ家族が、ヒーラーの賢母となったバリスを頼ってやってくる。バリスはその子供を知り合いに預けることに決め、自らはフォース・シスターの足止めに徹することにした。しかし、バリスは決してフォース・シスターを傷つけようとはしない。彼女を恐怖から解放するために優しく諭す。そして腹を貫かれてなお「出口」はあることを示した。フォース・シスター、いやリンはその言葉を受けて尋問官のライトセーバーを捨て、出口を見つけ出し、彼女の体を外へと運び出した・・・
バリスの「母性」が強調されたような一話だった。最近の女性主人公は、いわゆる「女性的」な部分と切り離されているが、バリスは違う。その慈愛を周りに向け続ける。彼女が良妻「賢母」の英訳である「Wise mother」という称号を手にしているのも、彼女が古き良き、いや不変の「母性」を持つ人物だと強調する。
今回のタイトルが「出口」であることからも、バリスが子どもを託した先が「隠された道」であるパスであることがほのめかされているのではないか。ただ、バリスが子どもとその家族に求めたお礼が「ただ生きる」ことである点は、ジェダイ復興が目的の一つであるはずのパスとは、やや違うか・・・?子どもにジェダイになれと言わないあたり、ジェダイ時代を肯定できるようになっても複雑な感情を抱く彼女の一面が見え隠れする。
今回で、バリスは死亡したと私は受け止めたのだが、どうもネット上ではそう思わないという意見が多い。確かに、カイロ・レン、リーヴァ、サビーヌなど近年では腹を刺された程度では死なない描写が多いが、第5話で「共に生きる」と約束した元ジェダイは第6話には登場しないので死んだのだろう。つまり、腹を刺されば、やはり死ぬのである!描写を見ても、呼吸は確かに止まっている。まぁ、ここら辺は解釈の余地を残すという判断ではないだろうか。なんでもかんでも1から10まで説明する必要性はない。
全体を通して映像美や演出、音楽は素晴らしく「文学的」ではあったが、尺の足りなさや説明不足感も否めない。バリスは他人の体内に爆弾をしかけて自爆させたテロ犯なのだが、そこへの反省は描かれず、ジェダイに少し反発していた心優しき人物くらいの描かれ方のように感じる。なぜ爆破テロまで至ったか、またはその後の反省の様子に1話くらい割いてもよかったのではないだろうか。(余談だがイスラム教徒風の恰好のバリスに自爆テロを行わせたことへの批判もある。ここでは本題とズレるので検討しないが)
また、前述したが、どうしてもバリスとフォース・シスターの違いに乗り切れなかった。元ジェダイの尋問官の同僚という共通点はあるが、帝国を極度に恐れるフォース・シスターと、その恐怖を感じもしないバリスの違いとはなんだったのだろうか。
そういう疑問に着目し始めると、色々と考えを巡らせられる。やはり、フォース・シスターとバリスの最大の違いは、オーダー66を知っているか知らないかだろう。絶対的な拠り所だと思っていたジェダイが崩壊する様を見て、フォース・シスターには大きな恐怖が植え付けられたはずだ。一方ジェダイと決別していたバリスにはそれがない。ここは二人を分ける大きな違いで、バリスを特殊な立ち位置にさせている。
そして、バリスが爆破テロに至った理由も、本作を通じて少し見えてきた。第4話でバリスは攻撃されたことに対して、感情的な攻撃をもって応じた。本来は心優しい母性的な彼女だが、この時点では右の頬を打たれて左の頬を差し出すようなことは出来ない。だから、暴力に走るジェダイにも、同じように暴力を持って訴えかけようとしてしまったのではないか。第6話で攻撃されているにも関わらず、一切反撃しない姿はそんな彼女の成長を物語る。
本作は確かに説明不足だが、この説明不足感が本作の大きな「味」であることは間違いない。あれはなんだったのか。どうしてああなったのか。そんなことを考えつつ楽しめるのは、丁寧に説明しすぎる作品が増えた近年では稀となった。たまには情報を追うだけではなく、深く味わってみてはいかがだろうか。
おまけ
そういえば、本作のフォース・シスターの登場は、明らかに『オビ=ワン』公開前から計画されたものだ。今やフィローニが全体を統括する立場にあることもあり、スター・ウォーズ作品は横の連携が取れるようになってきた。
豆知識
囚人服
バリスが着ていたオレンジの囚人服は、帝国に捕らえられたルミナーラが着ていた囚人服と酷似している。
尋問官たち
本作に登場する尋問官たちは、おなじみの顔ばかり。大尋問官は『反乱者たち』にて、フォース・シスターは『オビ=ワン』にて、マーロックは『アソーカ』にて、ペスト風マスクの尋問官は『テイルズ・オブ・エンパイア』にて初登場していた。
尋問官の城
衛星ナーにある尋問官の城は、ゲーム『ジェダイ:フォールン・オーダー』やドラマ『オビ=ワン』に登場。EP3直後が舞台の本作ではまだ建造中だ。
パージ・トルーパー
バリスを連行するトルーパーは、クロスヘアーが率いていた、非クローンによる部隊エリート・スクワッド・トルーパーと姿が似ている・・・が、音声解説によると彼らはパージ・トルーパーであるとのこと。いずれにせよ、クローン・トルーパーではないという描写だと思われる。
ヒーラー
前述したが、ヒーラーになるバリスというのは、レジェンズ設定からの要素。小説『Medstar』二部作にて、クローン大戦時代のヒーラーとしてのバリスの活躍が描かれていた。