- 第5話「帰還(The Return)」
- 評価: ★7.8/10(IMDbユーザー評価)
- 前回→第4話「それぞれのやり方」
- 次回→第6話
海外の反応
「メーデーのヘルメット・・・」
「クロスヘアーが"レッグ"のヘルメットをきれいに積み重ねる姿には心を動かされた」
「オメガとクロスヘアの掛け合いと仲の良さは、シーズンに入る前に予想していたものではなかったが、この2人の描写がとても気に入っているよ」
「周辺センサーはクリーチャー用で、盗賊用ではないというのはわかっていたね。『反乱者たち』に登場したクモを寄せ付けないセンサーを瞬時に思い出した」
「『クローン・ウォーズ』のアニメスタイルをここまで進化させるとは、いつも畏敬の念を抱いている。キャラクターモデルのテクスチャの貼り方がすごくいい」
「テクについて語られることが少ないにも関わらず、テクの喪失が明らかなのは巧みだね。みんな彼の穴を埋めようと奔走しているけど、不器用だ。テクがいれば、彼らはとっくにタンティスを見つけていただろうに・・・」
「シーズン1のラストで、テクがクロスヘアーを理解し、一番心を開いているような素晴らしいやり取りがあったことを思い出した」
「クローン役のディー・ブラッドリー・ベイカーが自分自身との会話で、こんなに感情をこめられるとは驚かされるばかりだ(笑)」
「クロスヘアーにも、自分のモライがいるのか(笑)」
あらすじ
前回、ハンターとレッカーと再会し、我が家に帰還したオメガ。お気に入りの人形と共に久しぶりにぐっすりと眠り、心地よい朝を迎えていた。しかし、同じく二人と再会したクロスヘアーは打ち解けられず、朝からAZIと共に射撃の訓練中。腕の震えにより彼はかつてのような命中精度を失っていた。オメガはクロスヘアーに、ハンターと話してみるべきだと告げる。
一行が滞在する惑星パブーにエコーがやってくる。クローン解放を目指すエコーとバッド・バッチは会議を行い、大勢のクローンたちが囚われているタンティス山の座標を割り出すため、ナラ・セのパッドを解読することにした。しかし、技術担当のテクは今や亡き人で暗号解読は難しく、クロスヘアーは代わりに警備の甘い帝国の制御盤で解読すべきだと提案した。その場所に向かう出立の直前、レッカーはクロスヘアーに彼のアーマーを返した。
一行はバートン4を訪れ、シーズン2でクロスヘアーが転機を迎えたあの前哨基地を訪れる。感傷に浸るクロスヘアーは、床に打ち捨てられたコマンダー・メーデーのヘルメットを拾い上げ、弔いの気持ちを見せる。それを見ていたハンターだが、クロスヘアーを無条件で再び信頼する気にはなれなかった。オメガは仲裁に入ろうとするが、エコーがそれを止める。ハンターはクロスヘアーの過去を問い詰め、クロスヘアーは真実を語ろうとするが、つい感情的になり「ハンターのせいでオメガが攫われたのに、俺が救ったから気に食わないんだろう」とハンターを挑発してしまう。
そこに突如として、巨大なクリーチャーが現れる。センサーはこの怪物を遠ざけるためにあったようだが、制御盤を起動させるために停止させてしまっていた。一行は役割分担を素早く行い、センサーの再起動へと動き始めた。ハンターとクロスヘアーは行動を共にし、途中でハンターは氷の下へと落ちてしまった。クロスヘアーは怪物をセンサーの向こう側に誘導しつつ、バッチャーと共に必死でクロスヘアーを助けようと奮闘する。そして間一髪のところでハンターを拾い上げることに成功した。二人は座りながら視線を交わす。少なくとも先ほどの剣呑な雰囲気はなくなっていた。エコーは「血を流していないだけで上出来だ」と評価する。
基地からの出発の直前、クロスヘアーはようやく自分の気持ちをハンターに明かした。「帝国に従うのが正しい道で、良き兵士だと思っていた。だが間違いだった」。ハンターは優しい言葉を返す。「俺も後悔はある。だが、希望のためには進み続けなければならない」。こうして、彼はクロスヘアーの部隊への帰還を受け入れた。今までクロスヘアーの上を旋回するだけだったあの鳥は、ようやく次なる地へと飛び去った。
レビュー
驚くほど巧みな一話だ。オメガのパブーへの帰還、クロスヘアーの前哨基地への帰還、そしてクロスヘアーの部隊への帰還が描かれ、「帰還」という単純な題に何重にも意味が重ねられている。シーズン2でも屈指の高評価だったS2-12「前哨基地」の後日譚として完ぺきであり、制作陣の力量が遺憾なく発揮されている。
S2-12にて、クロスヘアーはこの地で自らが「使い捨て」であることを知り、実際にメーデーが使い捨てられたことで、怒りと悲しみを持って帝国と決別した。その地に帰還したクロスヘアーは打ち捨てられた兄弟たちのヘルメットを丁寧に拾い上げる。彼には仲間を想う心があった。だからこそ、帝国に仕えていた。帝国に仕えるのが正しい道であり、良き兵士であり、仲間のためになると信じていたから。だが、S2-12でも示されたようにそれは間違った道だった。それでも自分の過ちをなかなか素直に認められないクロスヘアーだが、(自分の能力が衰えたこともあり)ようやく自分一人では無力であることを知り、チームの大切さを知ることが出来た。有能でなくともチームには居場所がある。ハンターも彼の献身を見て態度を改める。
S2-12でも強調されていた鳥の描写だが、あれはハゲタカであり、クロスヘアー自身でもあったのだろう。絶望に打ちひしがれ、死の匂いがするクロスヘアーをハゲタカはエサとして虎視眈々と狙っていた。だが、ハンターが彼に生きる道を示したことで、ハゲタカは飛び去った。そして、ようやくクロスヘアーも鳥も、グルグルと同じ所を回るのを辞めて、次なる道へと前進することが出来た。印象的で、巧みな情景描写であった。(追記:後述するように、この鳥は実際にハゲタカの一種であるハゲワシとして設定されていた)
クロスヘアーがこの地での出来事を全て語らなかったという描写にも満足している。シーズン2の総評にも書いたが、この『バッド・バッチ』という物語は、「普通ではない」生きづらさを抱えた人々の物語なのだ。コミュニケーションや人付き合いに難を抱えた人たちとどう向き合うかが主題であり、クロスヘアーが自分の物語を「普通に」饒舌に語っては意味がない。テクは人の神経を逆なですることをつい言ってしまうが、S2-9でオメガは彼の奥底のやさしさを知った。クロスヘアーは自分の気持ちを語れないが、今回ハンターは彼の態度からその本心を知り、ようやく口を開いた彼に理解を示した。本作は、そんな不器用な人たちへの理解を促す物語であり、優しさに溢れた物語なのだ。
豆知識
シェップとリアナ
オメガの帰還を喜んでた人物としてレッカーが名前を挙げたシェップとリアナは、どちらも惑星パブーの住民。シェップ・ハザードはパブーの村長で、リアナ・ハザートはオメガと同じくらいの年のシェップの娘だ。
メーデーと前哨基地
一行が訪れた前哨基地と、クロスヘアーが拾い上げたヘルメットは、どちらもS2-12「前哨基地」に登場していたもの。あのヘルメットを被っていたコマンダー・メーデーは衛星バートン4の前哨基地を守っていたが帝国により使い捨てにされ、クロスヘアーは怒りで帝国士官を射殺した。
スシ?
S2-13にも登場していたが、今回パブーでレッカーが口にしているのは、日本食の寿司のようなものだ。実は、スター・ウォーズ銀河には、スシと呼ばれる食べ物が既に存在している。アニメ『スター・ウォーズ クローン・ウォーズ』S2-4「元老院のスパイ」にて、アナキンとパドメは「スシ」と呼ばれるものを食べていた(実物は登場せず)
アイス・ワーム
バートン4の前哨基地を襲撃した巨大なアイス・ワームは、最も寒い季節には活発ではなくなるという設定。S2-12にこのワームが登場しなかったこととこの設定を踏まえると、S2より今回の方が暖かい時期であることがわかる。
ハゲワシ
クロスヘアーを追いかける鳥は、脚本では「氷のハゲワシ」として説明されている
※豆知識とユーザー評価は後ほど追加
- 前回→第4話「それぞれのやり方」
- 次回→第6話
- シーズン2総評:「普通ではない」元兵士が求める普通の生活
【『バッド・バッチ』シーズン3】