本作は、『クローン・ウォーズ』と『反乱者たち』に連なり、フィローニ監督が手掛けてきた「スター・ウォーズ アニメ」の最新作である。『EP3/シスの復讐』直後を舞台とするため、展開はある程度予想できるものもあるが、同時に大きな可能性も秘めており、すべてのスター・ウォーズ映像作品を繋ぐ重要作になるであろう。この記事では、シーズン2までの内容を振り返りつつ、三つの注目ポイントを挙げていく。
- シーズン2総評:「普通ではない」元兵士が求める普通の生活
帝国との戦いを辞めるクローン・トルーパー
本作のシーズン2まででは兄弟たちを助けるために、帝国との戦いを繰り広げつつ銀河中を飛び回っていたキャプテン・レックス。しかし、本作の約10年後を描く『反乱者たち』シーズン2に再登場したとき、彼は「戦いに意味を見いだせなくなった」と語り、ウォルフとグレガーと共に惑星シーロスで引退生活を送っていた。そこから逆算すると、本作でレックスたちクローン・トルーパーは帝国との戦いを諦めることになる。その結末へ繋がる展開は二つ考えられる。一つは、レックスたちの心が折れる展開。もう一つはクローン・トルーパーが自由を手にする展開だ。
シーズン3に暗い展開が待ち受けていることは容易に想像がつく。シーズン2の最終話でテクは無残にも落下死した(はず)。『反乱者たち』には、レックスに加えてウォルフやグレガーも登場するが、裏を返せばこの三人以外のクローン・トルーパーは登場しない。現時点でレックスと共に活動しているエコー、第三話「孤独なクローン」で帝国から離脱し、レックスの無二の親友だったコーディは、影も形もない。エコーとコーディは、『バッド・バッチ』以降も生き残れるのだろうか。二人を含めたクローン・トルーパーが数多く惨殺され、レックスの心が折れる展開になるかもしれない。
一方で、悲劇ばかりの展開になるとも思えない。上述したように、クローン・トルーパーが自由を手にする展開は十分に考えられる。『バッド・バッチ』シーズン2時点では帝国から離脱した脱走兵であるグレガーは、『反乱者たち』ではレックスと共に引退生活を謳歌していた。レックス、ウォルフ、グレガーは自分たちが自由を手にしたと実感している。その見返りとして情報提供はしたと描写されているので、考えられるのは帝国との和睦だろうか。シーズン2を通じて、バッド・バッチは新たな故郷の候補となる惑星パブーを発見した。彼らも、レックスたちのような引退生活へと入るのかもしれない。
帝国によるクローン技術の活用とストランド=キャスト
本作の主役であるバッド・バッチの隊員はエコーを除いて、それぞれが特殊な遺伝子改良を受けたクローンだ。この遺伝子を改良するクローン技術こそ、時代が違うスター・ウォーズの各映像作品を繋ぐ縦の糸になっている。
『スカイウォーカーの夜明け』では、スノークとレイの父親(パルパティーンの"息子")が人造人間の「ストランド=キャスト」の失敗作であると明かされた。『マンダロリアン』シーズン3では、このストランド=キャストは複数の優秀な遺伝子を組み合わせたものであることがほのめかされ、実際にモフ・ギデオンはジェダイ(グローグー)と自分の遺伝子を組み合わせた軍隊を創ろうとしていた。そして、『バッド・バッチ』シーズン2では、改造されて急成長するジロ・ビーストやオメガの姉といった特殊なクローンがさらに登場した。
これらの要素を時系列順に整理すると、バッド・バッチに使われたカミーノアンの遺伝子改良技術が、モフ・ギデオンの手に渡り研究され続け、やがてスノークやレイの誕生、パルパティーンの復活に繋がるという流れになるだろう。オメガの誕生の秘密への回答が本作で明かされると語られており、よりクローン技術にスポットライトが当たるのは間違いない。ただ、その技術研究が『スカイウォーカーの夜明け』まで完成していないことを考えると、最終的にバッド・バッチは、帝国の計画の進行を妨げる「限定的な勝利」を掴むのではないだろうか。
クローン技術と言えば、ジャンゴの純粋なクローンであり、バット・バッチやオメガの「兄」であるボバ・フェットの登場も期待される。マンダロリアン・シリーズの再登場で改めて悪人ではない一面や親思いの一面が強調されたボバは、「きょうだい」の物語に加わらないのだろうか。ボバがジャンゴのアーマーを手に入れるエピソードは、未だに『クローン・ウォーズ』の未完成エピソードであり、この物語の救済も行われてほしいが。
また、『アソーカ』で復活したスローン大提督が本作にも関わってくるかもしれない。シーズン3開始時点でオメガとクロスヘアが監禁されているクローン研究施設の「タンティス山」。レジェンズ(旧設定群)では、スローン大提督がこの山の技術を活用し、猛スピードで急成長するクローン軍団とルーク・スカイウォーカーのクローンで新共和国を壊滅寸前にまで追い込んでいた。つまり、この地はスローンゆかりの地だ。
いずれにせよ、クローン技術が、『バッド・バッチ』シーズン3、そして現在のスター・ウォーズ映像作品群において大きな意味を持つことは疑いの余地がない。地味ではあるが、最も注目したいポイントだ。
ヴェントレスの復活と「隠された道」パス
『クローン・ウォーズ』で女性ヴィランとして活躍したアサージ・ヴェントレスが、『バッド・バッチ』シーズン3に帰ってくる!『クローン・ウォーズ』ではドゥークー伯爵から裏切られ、故郷ダソミアを失ったところまで描かれたが、その後の未完成エピソードではその死まで描かれている。その内容は小説『Dark Disciple』に再利用された。あらすじはこうだ。
ドゥークー伯爵暗殺任務に就いたクインラン・ヴォスは、任務成功のためにヴェントレスとタッグを組むことになり、やがて二人は恋仲となる。クインランはその過程で闇へと堕ちかけるが、ヴェントレスは自らを犠牲とすることで彼の命を守り、その堕落も阻止した。彼女の死体は故郷ダソミアへと安置された。(詳しい内容は後々)
本作の再登場で、彼女は真に死んでいなかったことになる。小説の内容が無視されたわけではなく、彼女は死から復活したようだ。どのような理由付けがされるかは不明だが、『アソーカ』にも登場した魔女ナイトシスターの不思議な魔法や『スカイウォーカーの夜明け』でパルパティーンが使用したクローン体での復活などが考えられる。パルパティーンが追い求める死を超越するための秘術がこの復活に隠されているかもしれない。
それ以上に、注目ポイントなのがドラマ『オビ=ワン』やゲーム『ジェダイ:サバイバー』に登場した「隠された道」パスとのつながりだ。このパスを通じて、フォースに敏感な子供たちはジェダイの生き残りに保護され、帝国の魔の手から逃げることが出来た。そして、その中心人物としてドラマ『オビ=ワン』ではクインラン・ヴォスの名前が挙げられていた。恋人のヴェントレスが本作で活躍するのなら、当然クインランの登場も期待される。再びジェダイに意味を見出したヴェントレスは、クインランと共に、未来のジェダイとなりうる子供たちの保護活動に加わるのではないか?
『マンダロリアン』シーズン3で救出が描かれたグローグーも、このパスを通じて逃げ延びたと思われる。また、2026年以降に公開される三作のスター・ウォーズ映画はいずれもジェダイ・オーダーをテーマとしたものであり、ルークやレイのジェダイ・オーダーとこのパスが繋がる可能性も十二分に考えられる。
ヴェントレスの復活は、ただのファンサービスにとどまらず、死を超越するというテーマや「パス」とのつながりはスター・ウォーズ作品の新たな横糸となるだろう。
期待するものは・・・
登場する要素として予想したものを端的にまとめると、クローン・トルーパーと帝国の和睦、帝国によるクローン技術の悪用とその阻止、ヴェントレスによるジェダイの保護運動である。いずれも、近年のスター・ウォーズ映像作品と密接につながる要素である。このように既存の物語が強化されていくのは、スター・ウォーズの大きな魅力である。『バッド・バッチ』シーズン3により、さらにスター・ウォーズが奥深くなるであろう。
配信スケジュール
※副題は拙訳
- 2月21日:第1話「幽閉」 & 第2話「未知の道(パス)」& 第3話「タンティスの影」
- 2月28日:第4話「別のアプローチ」
- 3月6日 :第5話「帰還」
- 3月13日:第6話「潜入」& 第7話「抽出」
- 3月20日:第8話「バッド・テリトリー」
- 3月27日:第9話「前兆/ハービンジャー」
- 4月3日 :第10話「アイデンティティ・クライシス」&第11話「帰還不可能地点」
- 4月10日:第12話「ジャガーノート」
- 4月17日:第13話「突破口へ」
- 4月24日:第14話「フラッシュ・ストライク」
- 5月1日 :第15話「騎兵隊のお出ましだ」
筆者:ジェイK(@StarWarsRenmei)
画像は、スター・ウォーズ各作(1977-2024、ルーカスフィルム)より。