- パート5「影武者(Shadow Warrior)」
- 監督:デイヴ・フィローニ
- 脚本:デイヴ・フィローニ
- 評価:★9.4/10(IMDbユーザー評価)
- 海外の反応
- 前回→第四話「堕ちたジェダイ」
- 次回→ 第六話(9月20日配信)
あらすじ
惑星シートスに到着したヘラ・シンドゥーラ将軍率いる一行。しかし、時既に遅く、アソーカ・タノはベイラン・スコールに敗れ、サビーヌ・レンは敵に連れ去られていた。ヒュイヤン教授は二人が助言を聞き入れずに別々に行動したことを嘆く。二人を完全に見失ったかのように見えたが、ヘラの息子であるジェイセン・シンドゥーラは波の中からライトセーバーの音を聞きとる。ジェイセンは、ジェダイのケイナン・ジャラスの息子でもあり、特別な力がある。
落下したアソーカは、死んだはずの師アナキン・スカイウォーカーと対面していた。アナキンは最後の訓練を施すためと、アソーカに襲い掛かる。アソーカは再び転落し、気がつくと、そこはクローン大戦中だった。彼女は少女の姿に。アナキンはこれが訓練だと告げる。場面が切り替わると、ライロスでの戦いに。アソーカはジェダイである自分が部下を死に追いやったことを悔いるが、アナキンは生き残るためには戦うしかないと諭す。
海を捜索している一行。だが、カーソン・テヴァらは何も発見できない。新共和国の援軍も見込めない絶望的な状況。だが、その中でも仲間を思い続けるヘラをヒュイヤンは称賛する。すると、チョッパー(C1-10P)が海中に何かを見つける。
アソーカは、キャプテン・レックスと共に参加した、クローン大戦の最終戦であるマンダロア包囲戦の中に。アナキンは彼女が立派な戦士になったことを褒めるが、アソーカはアナキンから「死と戦争」を受け継いでいることを恐れていた。「生か死か」を選ばないアソーカに失望したアナキンは、赤いライトセーバーで襲い掛かる。二人は感情を剥き出しに戦うが、最後はアソーカがライトセーバーを捨て、生きることを選んだ。アナキンは、彼女の中に希望を見出す。
アソーカは海中から引き揚げられた。翌日、目覚めたアソーカはサビーヌの不在を知る。新たな白い服に身を包み、地図の残留思念から彼女が敵の船に乗ったことを知る。そして、宇宙クジラことパーギルの手助けで、サビーヌの現在地に向かうことを思いつく。
新共和国の本部に無断で独断専行したヘラは苦境に立たされていた。彼女をかばってくれたレイア・オーガナ議員にも次の手はなく、モン・モスマ議長からは召喚命令が伝えられた。だが、カーソンの活躍もあり、彼女を捕らえにきた新共和国の艦隊の足止めには成功する。その隙をつき、パーギルの口の中のアソーカとヒュイヤンは、別の銀河へと飛び立つ・・・
アナキンと巡る戦場
『クローン・ウォーズ』の「実写化」となった今回。アニメのアナキンの衣装や少女のアソーカに加え、キャプテン・レックスやマンダロア包囲戦までドラマで見ることが出来た。『クローン・ウォーズ』の監督でもあったフィローニだからこそ、文句のつけようがない完璧な実写化だった。実写になると、戦争の悲惨さとアソーカの幼さが強調され、少女が戦争に駆り出される異常さも分かる。
アナキンはアソーカを教え導くためにクローン大戦を追体験させていた。このアナキンは死後の霊体であったのだろう。彼は「あなたとは戦わない」という『EP6/ジェダイの帰還』のルークの台詞を覚えている一方、『クローン・ウォーズ』シーズン7のマンダロア包囲戦の出来事は知らない。そして、ジェイセンはライトセーバーの戦闘による音を聞いている。以上のことから、アソーカの頭の中での出来事ではない。
二人が対面したこの場所は、『反乱者たち』にも登場した「はざまの世界」だ。この世界は空間に加えて、時間をも超越している。すなわち「生と死のはざま」にも位置する。前回ベイランに敗れたアソーカは、『反乱者たち』でヴェイダーに負けそうになった時と同様に、この世界にたどり着く。彼女にはまだ生きるチャンスがある。そんな中、アナキンは最後の教えとして、彼女にライトセーバーを突きつけ「生か死か」の選択を迫る。その真意とは・・・
アナキンの教えとジェダイの本質:生きて変化せよ!
アナキンの言葉は漠然としており、さらに「肉体言語」での会話も多いため、アナキンの教えの真意は読み解きづらい。だが、要約すると、アナキンがアソーカに伝えたかったのは「生きて変化せよ」ということではないだろうか。アナキンの教えは大別すると3つに分けられる。1つ目は「生か死か選べ」。2つ目は「ジェダイは生きるために変化した」。3つ目は「アソーカには代々の遺産が受け継がれている」。
まずアナキンは「生か死か」を選ぶように問いただす。アソーカは今まで「生かされてきた」存在であった。『テイルズ・オブ・ジェダイ』では、弱肉強食の理の外に居た。『クローン・ウォーズ』S3ではモーティスの神の命を分け与えられた。『反乱者たち』S4では、「はざまの世界」という「反則技」で死の間際から救い出された。今まで「生きる」ことを選ばずとも、生き延びてきたアソーカに対し、今回のアナキンは苛烈に選択を迫る。
互角の戦いの末、アソーカはクローン大戦の戦場へと飛ばされる。この戦争こそがアソーカへの訓練であるそうだ。場面は切り替わり、おそらくはライロスの戦いに。アソーカは自分の選択で部下を死に追いやったことを悔い、「このために訓練したんじゃない」と抗議する。アナキンは「状況によって役割は変わり、戦わなければ死ぬ」と諭す。平和の守護者だったジェダイも、「生きる」ために兵士になるという選択をした。(後述するが、この選択は多くの無辜の人々を「生かす」ものでもある)。
マンダロア包囲戦を初めて目にしたアナキンは、アソーカが立派な戦士となったことを褒める。そして、アソーカもアナキンと同じように「代々受け継いできた遺産の一部だ」と告げる。その言葉を受けて、アソーカはその遺産が「死と戦争をもたらす」ことを恐れた。「もし、私がアナキンと同じなら・・・」と。アナキンはその答えに不満を持ち、再び最初の問いに戻る。「生か死か」・・・。ここでアソーカは大きな勘違いをしている。二つ目の教えを思い出そう。「ジェダイは生きるために変化した」。つまり、アナキンやアソーカと同様に遺産を代々受け継いできたジェダイたちでも、生きるために過去のジェダイからの変化を強いられた。「生きる」とは「変化」なのだ。遺産を受け継いでいても、アソーカが生きようともがく限り、アナキンと同じになるはずはない。アソーカの恐れは杞憂のはずだが、そのことに気付けていない。
赤いライトセーバーを持ったアナキンは、アソーカに襲い掛かる。激しい斬り合いの末、アソーカはセーバーを奪い、アナキンに突き付ける。感情を剥き出しにした二人の目は黄色に染まる・・・。が、アソーカはライトセーバーを捨てる。同じ怒りを持ってアナキンを死に追いやれば、「死と戦争」だけを継承する者になってしまう。パルパティーンがルークやレイにそれを望んだように。だが、アソーカは「生きること」を選んだ。「生きて変化すること」を選んだ。その姿を見たアナキンは、彼女の中に希望があることに満足し、姿を消した。
「生きるか死ぬか」という問いは、「戦うか諦めるか」、「変化するか停滞するか」を尋ねるものであった。アソーカは『反乱者たち』でヴェイダーと対峙した心の傷や、自らの中にある闇への不安から立ち直れずに、サビーヌを「ジェダイらしい」考えに縛り付けようとし、家族を捨てるように迫ってしまった。だが、彼女は「生きて戦い、変化する」道を選んだ。サビーヌとの師弟関係は前進するはずだ。
「ジェダイらしさ」とは、古びた本に書かれた「掟」ではない。その本質とは、慈愛であり、優しさであり、思いやりである。ならば、その在り方は、時代の要請に応じて変化するものだ。平和の守護者だったジェダイも戦争の兵士となり、「生きる」道を選んだ。それは、何もしないよりはより多くの無辜の人々を「生かす」道、つまりよりジェダイの本質に近い道だからだ。
ジェダイ・オーダーを去ったアソーカだが、彼女は再びジェダイとなった。その掟は捨てて、生き方を変えたとしても、本質を捨ててはいない。かつてヴェイダーがジェダイの本質を選んだように、アソーカは生きて変化し、新たなジェダイとなることを選ぶ。その表れが、変化を恐れずに、停滞するよりはマシとパーギルの口へ飛び込む場面だ。
第四話でベイランは「創造のための破壊を望む」と語っていた。シスも同様の考えを持ち、共和国の守護者たるジェダイを停滞していると非難した。だが、ジェダイは常に「生きる」ためにもがき、「生かす」ために変化してきた。ジェダイの本質にある慈愛や優しさ、思いやりはいつだって常に善だ。その善の本質を社会に適用するための努力こそ、社会を守るために真に必要な要素だ。
苦境に立たされるヘラと覚醒したジェイセン
無許可で出撃したヘラ・シンドゥーラは新共和国内で苦境に立たされている。旧友のレイア・オーガナ議員の擁護も限界であり、モン・モスマ議長も彼女に召喚命令を下した。いくら確証がないとはいえ、危機感が欠けた新共和国にはあきれたものである。モーガンの追跡には艦隊を出さずに、ヘラの追跡には艦隊を出すのも無能さが際立つ。この体たらくだから新共和国はファースト・オーダーに滅ぼされるのである。その中でも、ヘラは鋭い勘を失わず、仲間への思いやりもある。今後の彼女は新共和国を離脱しそうだが、やがてはレジスタンスに合流するだろうか?
また、とうとうジェイセンの父がケイナン・ジャラスであることが劇中でも明言され、彼の潜在能力が明らかになった。彼には、フォースを操る資質がありそうだ。今後、彼がジェダイを目指すのかに注目だ。ルークのジェダイ・オーダーに入るとなると・・・カイロ・レンに殺される結末になってしまうが、アソーカやサビーヌといった異色のジェダイの弟子になる可能性もある。EP9後を描く映画で、レイのジェダイ・オーダーと合流するという話になっても、それはそれで面白いかもしれない。
豆知識
「前にも聞いたことがある」
アソーカの「あなたと戦いたくない」という言葉に対し、アナキンは「前にも聞いたことがある」と返す。これは、『EP6/ジェダイの帰還』での戦いで、ルークがライトセーバーを自ら捨てた場面のことを指している。(勘違いしている人も見受けられるが、『反乱者たち』のアソーカは「あなたと離れない」としか言っていない)
オーガナ議員
ヘラを支援している議員として、我らがレイア・オーガナの名前が登場した。二人は、アニメ『反乱者たち』にて親交があった。
ケイナン・ジャラス
ジェイセンの父親として、ジェダイのケイナン・ジャラスの名前がようやく登場した。『反乱者たち』で活躍したケイナンは、評議員のデパ・ビラバの弟子であり、オーダー66を生き延びた後、エズラ・ブリッジャーの師匠となった。
第332中隊
共和国軍の様々なドロイドや乗り物(2-1B、AT-TEなど)が再登場したが、今回は第332中隊の初の実写化となった。この中隊は、アソーカがマンダロア包囲戦に参加するときに創設された部隊で、ヘルメットにはアソーカを模したシンボルが入っている。
キャプテン・レックス
『クローン・ウォーズ』の大人気キャラであるキャプテン・レックスが実写化!声を演じるのは、ジャンゴやボバ、クローン・トルーパーを実写で演じてきたテムエラ・モリソンだ。
スーパーコマンドー
マンダロア包囲戦のシーンで、マンダロリアン・スーパー・コマンドーが実写化した。このマンダロリアンは、元シスのモールに仕えており、ヘルメットには彼を模した角をつけている。
シス・アイ
赤いライトセーバーを持ったアナキンの目は黄色に染まっている。これは通称「シス・アイ」と呼ばれるもので、暗黒面に堕ちた者の特徴的な目だ。アソーカがアナキンのセーバーを奪った後には、彼女の目もシス・アイのような色になっている。
白のガンダルフ
水中から引き揚げられたアソーカは、今までの灰色の衣装から白い衣装へと服を変えた。これは、『指輪物語』のガンダルフが復活後に「白のガンダルフ」となったことへのオマージュだろう。
パーギルとエズラ
パーギルを目撃したジェイセンは、お母さんが聞かせてくれた、エズラが悪者を連れ去った物語みたいと目を輝かせる。その物語は、『反乱者たち』の最終話で描かれた戦いのことだ。
『最後のジェダイ』のオマージュ
カーソン・テヴァは、新共和国の艦隊の接近に対する時間稼ぎをするために、長ったらしい話を艦長に語っていた。これは、『最後のジェダイ』でハックス将軍へ時間稼ぎを試みたポー・ダメロンのオマージュだろう。
アデルファイ
カーソン・テヴァは自分が惑星アデルファイの基地に所属していると告げる。アデルファイは『マンダロリアン』シーズン3第五話に登場した惑星で、ゼブが通っているバーがある。
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