- パート4「堕ちたジェダイ(Fallen Jedi)」
- 監督:ピーター・ラムジー
- 脚本:デイヴ・フィローニ
- 評価:★9.1/10(IMDbユーザー評価)
- 海外の反応
- 前回→第三話「飛び立つ時」
- 次回→ 第五話(9月13日配信)
あらすじ
船を破壊されて惑星シートスへと着陸したアソーカ・タノ、サビーヌ・レン、ヒュイヤン教授。一行は、スローン大提督を帰還させようとするモーガン・エルズベスと、彼女が持つ地図を追っている。アソーカはその地図の破壊を視野に入れているが、それは同時にスローンと共に行方不明になったジェダイのエズラ・ブリッジャーを諦めることを意味する。その提案を受けたサビーヌは動揺する。
モーガンの計算はまもなく完了するところであった。アソーカらを足止めする必要があったが、ドロイドや一般兵では相手にならず、シン・ハティとマロックが撃退のために出撃する。
新共和国のヘラ・シンドゥーラ将軍は上層部の決定に逆らい、息子のジェイセン・シンドゥーラとC1-10P(チョッパー)と共に、<ゴースト>に乗り込んで惑星シートスへ向かう。彼女を慕うカーソン・テヴァやフェニックス中隊も一緒だ。
シートスの森では激しい戦いが繰り広げられ、アソーカはマロックを撃破する。シンと戦うサビーヌは、地図のところへ急ぐようマスターへと促す。その言葉に従ったアソーカは、基地にて元ジェダイのベイラン・スコールと対峙する。ジェダイ時代のアナキンを知っていたベイランは、未来を守る大義のため、創造に必要な破壊のため、戦っていることを語るが、当然アソーカは受け入れない。二人は剣を交える。
森の中では、サビーヌが追い詰められていた。彼女のフォースを操る能力は限りなく低い。シンは「お前には力など無い」と告げ、とどめを刺そうとする。だが、マンダロリアンの武装でサビーヌは危機を乗り切った。基地での戦いでは、アソーカが一時的に地図を手に入れて計算の阻止に成功するものの、追い詰められる。そこにシンが現れると、アソーカは弟子が倒されてしまったと誤解する。怒りの感情に任せ、シンをテレキネシスで吹き飛ばす。だが、サビーヌは生きていた。アソーカは弟子に地図を破壊するよう命令するも、サビーヌは躊躇し、アソーカは崖の下へと転落した。
そんなサビーヌに、ベイランは優しく語り掛ける。「マンダロアで家族が死んだのは、マスターがお前を信じなかったからだ。お前が唯一の家族であるエズラと再会するためには、私と手を組んだ方が良い」。逡巡の末、サビーヌは彼に地図を渡す。ベイランは約束を守り、危害を加えようとするシンを止めた。
シートスの近辺には、ヘラ率いるフェニックス中隊が到着した。だが、時すでに遅し。「シオンの目」はハイパースペースへとジャンプし、中隊はその余波で大損害を被る。ジェイセンは「イヤな予感」を覚える。
死亡したかに思われたアソーカだったが、彼女が目を覚ますと、そこは時空を超えた空間である「はざまの世界」だった。そして、目の前に現れたのは彼女のマスターであり、選ばれし者のアナキン・スカイウォーカーだった・・・
今ここで再会する意味
アナキン・スカイウォーカーの再登場にファンは大盛り上がりとなった。だが、これはただの都合の良いファンサービスではない。設定面でも、今までのフィローニ作品を踏まえたものであった。
今回アソーカが目を覚ましたのは「はざまの世界(World Between Worlds)」と呼ばれる世界だ。この世界にある各ポータルを通れば、時空を超越してあらゆる場所にアクセスできる。アニメ『反乱者たち』では、惑星ロザルのポータルからこの世界にアクセスしたエズラ・ブリッジャーが、別のポータルから二年前の惑星マラコアにアクセスし、ヴェイダーに殺される寸前だったアソーカを救った。ありていに言えば、タイムトラベルを行える世界だ。
この世界へのアクセスにはポータルに加えて、アニメ『クローン・ウォーズ』に登場した「モーティスの神々」の助力が必要になる。今回のアソーカはその力を借りていないように見えるが、彼女は三柱の神の一人「娘」から命を分けてもらった経験があり、彼女だけは例外的にアクセスしやすいのかもしれない。
今回アナキンが登場したが、彼は霊体であろう。霊体は空間を超越できるという描写が何度もされている。時間と空間が一体である以上、時間も超越できると考えるのが自然だ。死後の霊体は、この世界を自由に移動できるのではないだろうか。このような設定の背景はアニメを見てもらえれば把握できるが、別に抑えておかなくても良いものだ。
さて、現在のアソーカとサビーヌの師弟関係は崩壊しつつある。「信じていい?」との問いに、サビーヌは「もちろん」と答えた。アソーカは一度はその言葉を信頼し、シンとの戦いを任せた。だが、シンが基地での戦いに割り込んできた時、アソーカは弟子が力及ばずに殺されたと思ってしまった。彼女は弟子の力を信じきれなかった。結局それは勘違いだと分かるが、その後に現れたサビーヌは「正しいこと」ではない地図の保持を優先し、ショックを受ける。そして、この傾向は昔から変わっておらず、ベイランの言葉によると、サビーヌを「信じなかった」から、サビーヌの家族は失われたそうだ。アソーカは、弟子を信頼してこなかった。
そんな中に現れる師匠アナキン。彼がアソーカにかける言葉は・・・「弟子の歩む道を信じろ」であろう。アソーカは師弟を一つのくくりとして捉えすぎている節がある。だから、自分が「正しい」と思うことに従わず、我が道を行こうとするサビーヌに困惑する。だから、アナキンが闇堕ちしたことに自分の責任を感じ、罪悪感を覚える。第一話でも、途中でアナキンとサビーヌの元を去ったことをひどく後悔していた。
師匠と弟子は別の人物なのだ。弟子は、師匠のコピーではなく、別の道を歩むこともある。それは師匠からすると間違って見えるかもしれないが、必ずしも間違っているわけではない。アソーカのジェダイ・オーダー離脱を当時は「間違っている」と反対していたアナキンだからこそ、実感を持ってそのことを伝えられるのではないだろうか。
サビーヌのエズラを何としても助けたいという気持ちは、必ずしも間違いではないのだ。その根底にあるのは、ジェダイが重視すべき思いやりの精神だ。アナキンとの対話で、アソーカはサビーヌの進む道を信じるようになるのではないだろうか。
アナキンのように、ジェダイの道を認めないサビーヌ
サビーヌ・レンは悪役ベイラン・スコールの誘惑に屈し、地図を手渡す。この展開は私が前回「ジェダイの論理でエズラを見殺しにするか」の項で予想したものではあるが、今までの『帝国の逆襲』や『最後のジェダイ』、『クローン・ウォーズ』S7とは対照的に主人公サイドが悪役と手を組むという展開は、やはり衝撃的なものであった。
前回を読んでいない人のために繰り返すが、ジェダイの道を選ばないサビーヌは、ジェダイの自己犠牲という精神を認めないのである。『反乱者たち』で、ジェダイたるエズラは自己犠牲の精神を尊重していた。「はざまの世界」では自分の命を代償とした師匠のケイナンの意思を組んで彼の命を諦め、自らもスローン大提督を道連れに宇宙へと消えていった。今回のアソーカも、エズラの自己犠牲を尊重するように、彼の救出に拘るなと説得していた。だが、サビーヌは犠牲を認めない。
このサビーヌの決断の背景には、かつて師匠のアソーカに止められたことで、マンダロリアンの家族を失ったことがあるようだ。『帝国の逆襲』でベスピンに助けに向かおうとしたルークをヨーダとオビ=ワンが止めたように、マンダロアへ向かおうとしたサビーヌをアソーカは止めたのかもしれない。それが、サビーヌの命を守る正しい判断だった可能性はあるが、彼女は感情面では納得できていない。ベイランはそこに付け込み、「唯一の家族であるエズラを私なら救える」、「私はアソーカと違って約束を守る」と言葉巧みに誘導する。
結局、サビーヌにとって、「ジェダイの論理」は家族を奪うものだ。その自己犠牲の精神で、ケイナンとエズラは消え去り、ジェダイの師匠の「横やり」で本当の家族を助けにも行けなかった。だから、彼女はジェダイの道は選ばない。
人を救おうとジェダイを捨て悪へとすがる今回のサビーヌの描写は、パドメを救おうとした『シスの復讐』のアナキンにも重なる。だが、アナキンのような決定的な「暗黒面への転落」ではなく、エズラも世界も救える希望は残っている。フィローニは、『クローン・ウォーズ』でアナキンを描き、アナキンに同情してきた。だからこそ彼は、ここからサビーヌの成功を描き、アナキンがかつて抱き、サビーヌが現在抱いている「人を救おうとする思い」それ自体は悪いものではないと示そうとしているのではないか(もっともそれは『ジェダイの帰還』でも既に描かれている気がするが)。アナキンと対応していることに着目すると、次回のアナキンとアソーカとの会話や、サビーヌが歩もうとする道が味わい深いものになるかもしれない。
ベイランの目的:エリートのジェダイの復活?
弟子のシンを励まし、その暴走を止め、サビーヌとの約束を守るという騎士道精神まで見せたベイラン・スコール。ただの悪ではないベイランは、今回アソーカと直接対決し、その口から彼の目指す理想像が語られた。彼は、創造するために、未来を守るために、より大きな善のために、スローン大提督による破壊を望んでいる。
ベイランの目的は、未だに判然としないが、ジェダイ・オーダーの復権を目指しているように見える。弟子のシンにはジェダイ風のパダワンの三つ編みをさせ、ジェダイを殺すことも残念がっていた。そして、アナキンとアソーカが「死と破壊しかもたらさない」と批判する。この師弟に共通するのは・・・二人とも旧ジェダイ・オーダーを見限ったことだ。ジェダイに対する思い入れが垣間見える。
ベイランとアソーカは、似ている。二人ともが今はジェダイではなく、シスでもない。しかし、その弟子の素質には大きな違いがある。シンはフォースを操る才に恵まれているが、サビーヌにはそれがない。ベイランは今までのように、生まれ持った才覚を持つエリートに技術や知識を伝える。しかし、アソーカはそれを一般人たるサビーヌに伝授する。
この「エリートが力と知識を一般人へ譲渡する」啓蒙活動は、第二話で描かれたような「政治的信条を軽視し、自らの欲を優先する」一般人の悪に対抗する唯一の現実的な手段だ。エリートと一般人が対立している現実の政治(ポピュリズム)への回答になりうる。だが、彼女とは違う古びた思想を持つベイランは、エリートたる自分たちジェダイによる支配こそ正義だと考えているのではないだろうか。
ジェダイを復活させたいにしては、やや過激にも思えるが、ジェダイ・オーダーの崩壊と帝国の誕生を見てきたことを考慮すれば合点もゆく。ジェダイが一般人に嫌われ崩壊し、帝国がその破壊の中から誕生したことを考えれば、有効で非情な手もとりたくもなるだろう。彼曰く恐れに見えるものは「経験」であり、「遥か昔に信念を失った」のだから。
このベイラン卿(どうでもいいがベイランが苗字のようだ)は、物知り顔でアソーカにアナキンとヴェイダーについて語っていた。だが、本当にヴェイダーのことまで知っていたのか?サビーヌの過去について語る前には、目をつむって瞑想を行い、今まで未来を読んできたように、彼女の記憶を読んでいるようだった。そして、アソーカに話しかける前にはフードを深くかぶり、目線を隠している。本当は、ヴェイダーのことなど知らず、アソーカの記憶を読んで語っていただけなのではないだろうか?もしかしたら、彼のキャラには、もう一ひねりあるかもしれない。
豆知識
Fallen Jedi
今回のタイトル「Fallen Jedi」には複数の意味が込められていた。元ジェダイであるベイラン・スコールのこと、崖の下へと物理的に落下したアソーカ・タノのこと、ベイランの元に下ったサビーヌ・レンのこと、そして最後に、シスへと転向した元ジェダイのアナキン・スカイウォーカーのこと。
クリック
シンはアソーカたちが「12クリック先」であると語っていた。クリックは、キロメートルの言い換えであるスター・ウォーズ世界の単位・・・のはずだが、12キロは遠すぎるような?
フェニックス中隊
<ゴースト>に乗り込んだヘラが率いるフェニックス中隊、はアニメ『反乱者たち』にて初登場。元々は反乱組織の一つ「フェニックス戦隊」に所属していた。後に反乱同盟軍に加わり、ヘラがリーダーとなった。
カーソン・テヴァ
ランダー中尉
フェニックス中隊の中の一人、ランダー中尉を演じるのはブレンダン・ウェイン。『マンダロリアン』シリーズでディン・ジャリンのスーツアクターを務めている俳優だ。
モール戦へのオマージュ
アソーカはマロックを一太刀で葬るが、これは『反乱者たち』のオビ=ワンvs.モール戦のオマージュかもしれない。片方がダブル=ブレード・ライトセーバーを使い、主人公側が一太刀で仕留めるという構図が同じだ。
魔女によるゾンビ?
本作で元尋問官のマロックが倒されたが、その傷口からは緑色の煙が漏れていた。アニメ『クローン・ウォーズ』においては、モーガンの種族、ナイトシスターが死体を緑色の煙で操り、ゾンビにしていた。マロックも魔女の魔法によって生み出されたゾンビだったのかもしれない。
Sフォイル
シオンの目に近づく中、Xウィングの各機には戦闘態勢に入るために「Sフォイルを開け」との指示が下る。Sフォイルとは、可変式の翼のこと。『EP4/新たなる希望』でも戦闘態勢に入る時に、同様の文言が使われていた。
ケイナンの顔写真?
<ゴースト>の操縦席には、ケイナン・ジャラスの顔写真らしきものが貼られている。ヘラはケイナンの恋人、ジェイセンはケイナンの息子であり、顔写真があっても不思議ではない。
イヤな予感がする
スカイウォーカー・サーガ九部作すべてに登場している名台詞「イヤな予感がする」が本作にも登場!発したのは、ジェダイと名パイロットの血を引く少年ジェイセン・シンドゥーラ。
はざまの世界
崖から落下したアソーカが目覚めた場所は「はざまの世界」。時空を超えたこの空間は、アニメ『反乱者たち』に初登場し、この空間を通じてアソーカはエズラに命を救われた。
スニップス
「はざまの世界」にて、アナキンはアソーカにスニップス(Snips)というあだ名を使って語り掛けている。このあだ名は、『クローン・ウォーズ』にてアソーカが「生意気な態度をとっていた(get snippy)」からつけられた。
ヴェイダーのテーマ
アナキンの登場の直後、エンド・クレジット映像に入る直前に、ヴェイダーのテーマが流れている。これは、字幕でも明言されている。やや不穏だ。
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