- パート3「飛び立つ時(Time To Fly)」
- 監督:ステフ・グリーン
- 脚本:デイヴ・フィローニ
- 評価: ★7.6/10(IMDbユーザー評価)
- 海外の反応
- 前回→第二話「苦悩と苦難」
- 次回→ 第四話(9月6日配信)
あらすじ
再びパダワンとなったサビーヌ・レンは、1000年以上にわたりジェダイの子供たちを指導してきたヒュイヤン教授の下で剣の訓練に励む。師匠のアソーカ・タノは修行の一環として、サビーヌの視野を遮断する。集中し、行動を予想するように指導するが、サビーヌはなかなかうまく行かず、苛立つ。それでも、諦めずに訓練を続ける。
新共和国のヘラ・シンドゥーラ将軍は、惑星コレリアでの一件からスローン大提督の帰還が迫っていることを確信し、委員会に軍の派遣を求める。しかしハマト・ジオノ議員は、その意見が「スローンと共に消えたエズラ・ブリッジャーを救いたい」という彼女の私情に過ぎないと批判する。モン・モスマ議長は決定を先送りにした。打ちひしがれるヘラの前に、愛息子のジェイセン・シンドゥーラが現れる。彼はチョッパー(C1-10P)からサビーヌがジェダイの訓練を積んでいることを聞き、自分もジェダイになりたいと語る。本人が知っているかはわからないが、彼の父親はジェダイのケイナン・ジャラスであり、ジェイセンにはジェダイになれる才能があるだろう。
サビーヌは才能がないことを悩んでいた。そんな彼女に師であるアソーカは、大切なのは訓練と集中力であり、小さい事から始めるように勧める。アソーカはサビーヌに「ジェダイ」になってほしいわけではなく、「彼女自身」であって欲しいようだ。
援軍は来ないというヘラからの連絡は突如として途切れる。惑星シートスの近辺では、シン・ハティとマロックが待ち受けていた。アソーカとサビーヌは見事なコンビネーションで危機を脱するが、モーガン・エルズベスの乗る<シオンの目>に近づき、被弾してしまう。しかし今度は、片方が船外、もう片方が船内という役割分担で、船を再稼働させることに成功する。そして、パーギルの群れに紛れ、追っ手を撒くことが出来た。
森の中で、三人は<シオンの目>が銀河間航行を可能にするハイパー・リングであること、そしてエズラを連れ去ったパーギルと密接な関係にあることを確認する。
ベイラン・スコールは、配下に命令を飛ばし、森に隠れるジェダイを見つけ出すように告げた・・・
別銀河への航路
モーガンが探してた「地図」が何を示すものなのか、今回でより明確になった。どうやらパーギルの移動路を示していたようだ。ヒュイヤン教授曰く「ジェダイ・アーカイブには、銀河間のハイパースペース・レーンの記録があり、“宇宙クジラ”パーギルの移動に使われていた」そうだ。パーギルは『反乱者たち』でエズラとスローン大提督を攫った後、この道を通り、「別の銀河」へ渡ったのであろう。
この前提を踏まえると、第二話で述べられた歴史の事実「古代人が別の銀河からSW銀河に移住した」ときにも、パーギルが使用されていたと推測できる。そして、ジェダイ・オーダーはその事実を把握していた。古代人とジェダイ・オーダーの関係性も気になるところだ。
また、パーギルが銀河間の航行が出来るのならば、なぜその後に誰もパーギルを活用しないのかという疑問も湧く。スローンやモーガンらの悪が利用するのは難しいとしても、ジェダイであるエズラはパーギルと絆を結んでおり、彼らの助けで戻ることも不可能ではないように思えるが・・・?何らかの事情があるのだろうか。
パーギルの航路でたどり着ける「別の銀河」は、今年末に配信予定のドラマ『スケルトン・クルー』で掘り下げられるのではないだろうか。同作は「迷子になった子供たちが家へと帰る物語」だと発表されており、全体の流れを鑑みると、彼らは「別の銀河」を彷徨っていると考えるのが自然だ。「マンダロリアン・バース」の完結作である映画「フィローニ監督作」を前に、「別の銀河」の事情が描かれることを期待したい。
サビーヌの歩む道
サビーヌはアソーカから、ライトセーバーやフォースの訓練を受ける。だが、フォースを操る才能に全く恵まれていないサビーヌは、ルークらとは対照的に、習得に苦戦する。ヒュイヤンは「なぜジェダイにするのか?」と問う。アソーカの答えは、「ジェダイではなく、彼女自身であってほしい」と答える。
アソーカがパダワンであるサビーヌをジェダイにしたいと思っていないことは髪型にも表れている。髪を切ったサビーヌを見て、アソーカは「貴方らしい」と返す。ジェダイの弟子であるのなら、シン・ハティのように三つ編みにするのが普通だ。だが、シンとは対照的に、サビーヌは髪型にも自由を与えられている。
アソーカとサビーヌは良いコンビだ。惑星シートスでのドッグファイトでは二人は息を合わせた動きで敵戦闘機を撃墜する。そして、同時に違う能力を持つ二人でもある。船が被弾した後、アソーカは船外で戦い、サビーヌは船内で修理する。ヘラの言葉通り、二人には互いが必要だ。二人は違う人間だからこそ、お互いの足りない部分を補える。
だからサビーヌには、アソーカのようにフォースを強力に操る力は必要ない。彼女は、ジェダイになるわけではない。だが、鍛錬を積めば、ある程度フォースを操ることは出来る。それは、ルーカスの言葉であるし[Tweet]、『ローグ・ワン』のチアルートでも示された。フォースと親和性を持ちつつ、彼女らしい(例えばマンダロリアンらしい)一面も用いて、彼女は、前人未到の新たな道を歩んでいくだろう。・・・そして、「究極の問い」に直面するかもしれない……。
ジェダイの論理でエズラを見殺しにするか
本作のテーマとして、サビーヌがエズラを見殺しに出来るかが問われそうだ。エズラとスローン大提督は、もはやこの銀河系にはおらず、別の銀河、言い換えれば「異郷」に居ることが明かされた。すなわち、彼らはこちらの銀河系にとっては「死んだも同然」の状況であり、エズラを救い出すことは神話の「冥界下り」に近いものになっている。
冥界下りは、アニメ『反乱者たち』でより直接的に描かれていた。同作で、エズラは時空を超越した空間「はざまの世界」に入る。そこで彼はアソーカを「死」から救う。しかし過去に、自分たちを守るために死んだマスターのケイナンは救わなかった。ケイナンの命を優先すれば、タイムパラドックスが生じ、彼が守ろうとした自分たちが生きる「現在」が破壊されるからだ。後にジェダイとしての自己犠牲を選び、スローンを道連れにするエズラは、ケイナンの自己犠牲をも肯定した。
本作においても、似たような状況にある。エズラは遠い異郷に囚われている。モーガンはその異郷にたどり着く術を持っており、エズラを救うことも可能なはずだ。だが、もしエズラを救おうと異郷に足を踏み入れれば、それは同時にスローン大提督の帰還にも繋がる。エズラが自己犠牲で守ろうとした自分たちが生きる「現在」が破壊される。
エズラはジェダイであるために、自己犠牲を肯定し、自己犠牲を実践した。だが、上述した通り、サビーヌはジェダイになるわけではない。加えて、彼女はエズラの自己犠牲によって、深い心の傷を負っている。サビーヌがエズラの自己犠牲を肯定する流れになるとはどうも思えない。ここまで描かれてきたとおり、サビーヌの優先事項はエズラである。モーガンの計画を阻止できる段階になっても、サビーヌはエズラを連れ戻すことを優先し、スローン大提督の帰還という悪夢を銀河にもたらすのではないだろうか
本作のテーマは、スター・ウォーズが長年扱ってきた「死者を救えるのか」だ。エズラを「死」から救おうとすれば、スローン大提督の帰還と銀河の危機という大きな代償を払うことになる。そういう「スター・ウォーズらしい構図」であろう。
・・・また、ケイナンの息子ジェイセンの「ジェダイになりたい」という言葉も気になる。本作が、私の予想通りの展開になったら、彼の言葉はどのような意味を持つのだろうか。彼は父親からフォースを操る力を受け継いでいる時点で、サビーヌとは対比になっている。そのまま順調にジェダイになり、再びサビーヌとは対照的に自己犠牲の道を歩むのだろうか。それとも、レジェンズのジェイセン・ソロと同じように、暗黒面へ進むのだろうか。注目だ。
神話・おとぎ話からの引用
やや本題からはそれるが、本作には神話やおとぎ話からの引用が散見されるので、そのことにも触れておこう。
ダークサイダーのベイラン・スコールとシン・ハティの名前は、北欧神話からの引用だ。北欧神話では、最終戦争「ラグナロク」の前に、巨人族の狼スコールが太陽を捕えて呑み込み、その兄弟のハティが月を粉砕する。その後、魔狼フェンリルが、自由の身となり、破滅をもたらす。これらの要素から考えると、スローン大提督の帰還は「ラグナロク」であるだろう。
そして、モーガン・エルズベスと尋問官マロックの名前は、アーサー王伝説からの引用だ。モーガン・ル・フェイは、アーサー王の異父姉にして魔女である。そして、マロックはモーガン・ル・フェイから伝えられた技によって狼男に変えられた騎士の名前だ。このことから、マロックの正体が、モーガンによって心を操られたエズラではないか、とする説もある。また、第二話の題「Toil and Trouble」は『マクベス』からの引用だった。
このように本作には神話の要素が散りばめられている。ルーカス監督は、神話を普遍化しようとする学者ジョーゼフ・キャンベルの試みから大きな影響を受けた。彼の弟子であるフィローニ監督も、神話を捉え直すことで、現代へと落とし込もうとしているのだろう。これは、ユダヤ人の物語を落とし込んだ『マンダロリアン』に続く試みだ。
豆知識
ザトーチ
『EP4/新たなる希望』でも登場した「目隠しの訓練」が今回も登場。そして、これが「ザトーチ(Zatochi)」と呼ばれていることが判明した。これは、盲目の侠客を主人公とした日本の時代劇『座頭市』からのネーミングであろう。
モン・モスマ
『EP6/ジェダイの帰還』で反乱軍のリーダーととして登場したモン・モスマが、五年後を描く本作では、新共和国の議長として登場。演じるのは、『ローグ・ワン』と『キャシアン・アンドー』から続投したジェネヴィーヴ・オーライリーだ。
ハマト・ジオノ
委員会の一員だったハマト・ジオノ議員は、EP7近辺を舞台としたアニメ『レジスタンス』の主人公であるカズーダ・ジオノの父親だ。同作にて、ホズニアン・プライムの政治家であるハマトは、身の安全を優先し、正義のために戦うレジスタンスの一員であるカズーダを止めようとした。
ジェイセン・シンドゥーラ
『反乱者たち』のエピローグにて初登場したヘラ・シンドゥーラの息子ジェイセンが、実写化。人間とトワイレックのハーフであり、その父親はエズラの師匠だったジェダイのケイナン・ジャラス(本名ケイレブ・デューム)だ。
また、その名はレジェンズ(旧設定)におけるハンとレイアの息子ジェイセン・ソロからとられている。ジェイセン・ソロは、伯父のルークの弟子のジェダイとして活躍したが、後に家族を守るために暗黒面へと堕ちてダース・カイダスとなり、双子の妹ジェイナ・ソロに殺された。縁起が良い名前ではない。
ハンマーヘッド・コルベット
今回、『ローグ・ワン』でも活躍したスフィルナ級ハンマーヘッド・コルベットが登場した。元々同機体は、レヴァンなどの大人気キャラが登場した、名作ゲーム『Knights of the Old Republic』に登場したもの。
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