本日6月15日に発売される小説『アソーカ』。大人気キャラクターのアソーカ・タノを主人公とした本作は、『クローン・ウォーズ』と『反乱者たち』の間、葛藤を抱えるアソーカの知られざる物語を描く。今年8月に配信開始の同名のドラマ『アソーカ』に向けた予習・復習にピッタリの小説だ。
今回は発売を記念して、日本版小説の表紙イラストを担当した人気絵師5ヘルスさん(@5healthMONO)の独占インタビューをお届け!
お気に入りの一枚は・・・
――インタビューをお受けいただきありがとうございます。まずは、スター・ウォーズのファンとなったきっかけや、ファン活動を始めたきっかけを教えていただけますか。
5ヘルスさん:
映画好きの家庭だったので、小さい頃から色んな映画をよくわからずに観ていて、スター・ウォーズもその一つでした。
どのエピソードをいつ最初に観たのかは覚えてませんが、小学5年生あたりで『シスの復讐』のダークな世界に惹き込まれた時から、スター・ウォーズが自分の中で特別な存在になり始めた気がします。町の図書館に竹書房の小説や『スター・ウォーズ エンサイクロペディア』など拡張世界(現レジェンズ)の書籍が充実していたことも、さらに沼に引きこまれる要因でしたね。
その影響もあって絵の趣向がスピンオフに傾倒していきました。7年前にWookieepediaのディスカッションに、コミック『ベイダー・ダウン(Vader Down)』のワンシーンを描いたイラストを投稿してみたところ、多くの方からお褒めの言葉を頂いたことで自信がつきました。それ以来マイナーなイラストや小さなこだわりでも、わかってくれる人はいると信じて色んな場所で投稿し続けています。
5ヘルスさんが初めて投稿した「ブロガス・バスで反乱軍を殲滅したベイダー」 |
――様々なキャラのイラストを投稿してらっしゃいますが、お気に入りを一人あげるとすれば誰ですか?
5ヘルスさん:
好きなキャラクターは別々の観点でたくさんいますが、あえてここで一人あげるとしたら、カル・ケスティスです。不安定感がいいですね。不安定なジェダイというのはアナキンを筆頭に多く描かれてきましたが、カルのそれは「フォースにおける光と闇の葛藤」ではなく「普通の人間が持つ感情の不安定さ」で、ジェダイらしい神秘性が薄いことにむしろ魅力を感じます。
『ジェダイ:フォールンオーダー』は、人間の心の成長をフォースやライトセーバーを比喩にして本当に巧みに描いている作品だと思います。(『ジェダイ:サバイバー』は未プレイなのでこれから楽しみです!)
――なるほど!では、お気に入りの一枚はどれになるのでしょうか?
5ヘルスさん:
そういった感じで何かしらの精神的なテーマを含んだものが好きなので、その点ではこの絵がお気に入りですね。
Immolation#StarWars pic.twitter.com/V5BBLNvztq
— 5ヘルス@6/17 UNLEASHED (@5healthMONO) June 9, 2021
パドメの葬式の衣装は海がモチーフらしく、それが着想の元になっています。ベイダーの中にある静かな記憶の海とムスタファーの業火、その中心に宿る二つの希望を描きました。
ベイダーのマスクは角度や演出によって様々な表情を見せてくれるので、それを活かす構図を考えるのは毎回楽しいです。
公式イラストレーターとしての思い
――5ヘルスさんは、『イントゥ・ザ・ダーク』の表紙を担当して、「公式イラストレーター」になりましたよね!どのような経緯だったのでしょう?また、どう感じましたか?
5ヘルスさん:
活動が実を結んで「たまたま見つけてもらえた」といったところでしょうか。
お話を頂いた時は、それはもう飛び上がるほど嬉しかったです。これほどの驚きと喜びは人生で二度目でした。(一度目は『クローン・ウォーズ』シーズン7が発表された時です!)
経験豊富なイラストレーターではなく自分に声をかけてくださったということは、上手い絵以上のものを期待されていると受け取ったので、必ず応えなければいけないと身が引き締まる思いでしたね。
5ヘルスさんが担当した『イントゥ・ザ・ダーク』の表紙 |
参考にした資料と、引き出したかったアソーカの魅力
――今回の『アソーカ』の表紙も素晴らしいですね!どのような資料を参考にしているのでしょうか?
5ヘルスさん:
時系列的に当然といえば当然ですが、『クローン・ウォーズ』シーズン7と『テイルズ・オブ・ジェダイ』は今回のアソーカを描くにあたっての基礎となりました。ただし、今回はあくまで小説『AHSOKA』の翻訳なので、『テイルズ・オブ・ジェダイ』と原書表紙の中間という塩梅にしています。
原書の表紙 |
目ざといファンの方はお気付きかもしれませんが、衣装は『クローン・ウォーズ』の未完成エピソードから引用しています。原書の表紙もこの衣装で描かれていますが、色合いや細部をより『クローン・ウォーズ』の設定画に忠実にしています。
未完成エピソードのコンセプトアート |
顔やモントラルの模様は、『テイルズ・オブ・ザ・ジェダイ』を基準に『反乱者たち』のシャープでギザギザした感じをそれとなく取り入れてます。白いライトセーバーのヒルトは細部の造りが資料によって異なるため、『マンダロリアン』のメイキングに鮮明に写っていた実写のデザインを参考にしました。
・・・というように、あらゆる媒体で描かれた全てのアソーカが参考資料でした。
――アソーカ・タノはファンに大人気のキャラクターですが、5ヘルスさんはどの部分が魅力だと感じますか?
5ヘルスさん:
アソーカは今や、本編の主人公であるルークやアナキンら以上に長い時間をかけて深掘りされているキャラクターとなっています。ファンは劇場版『クローン・ウォーズ』が公開されて以来、幼少期からの成長を様々な映像媒体で15年近く見届けてきました。
彼女がどんな経験をしてきたかをこの目で見てきたからこそ、正しいかどうかに関わらず彼女の行動を応援したくなります。ビジュアルや人格、言動だけでなく「長く成長を見届けてきた」ことが大きな魅力に繋がっている特別なキャラクターだと思っています。
――その魅力を引き出すために、今回の表紙で特に拘った箇所はどこでしょうか?
5ヘルスさん:
今回のイラストは「細部までよく見て再現した」で済ませるわけにはいかず、表情でアソーカの精神性をどこまで出せるかを追求する必要がありました。現代イラストレーションを勉強する中で培った、3Dアニメとはまた違った表現をできる限り取り入れ、親しみはありながらも新しいアソーカであるよう心がけました。
小説を読み終えた後であらためて表紙を見た時、イラストからアソーカの決意を感じてもらえたならとても嬉しいです。
――今回の小説『アソーカ』のおすすめの場面を、ネタバレしない範囲で教えていただけませんか!?
5ヘルスさん:
ストーリーの詳細に触れない範囲で言うとしたら、この小説では所々に回想が挟まれ、あの人物やあの人物がアソーカにとってどんな存在だったかを知ることができます。
過去の教えと向き合い、逃避生活から戦いの場に戻るまでの彼女の心の変化が『テイルズ・オブ・ジェダイ』以上に丁寧に描かれているので、ぜひ皆さんの目で確かめてください。もっとアソーカが好きになると思います。
今後の目標について
――今後の目標はありますか?
5ヘルスさん:
スター・ウォーズ書籍の表紙を描くことは本当に楽しくやりがいがある仕事なので、今後ももちろん続けていきたいです。スター・ウォーズに関するある程度の知識と絵柄の幅広さが自分の武器だと思っているので、それを活かして本国であるアメリカからスター・ウォーズの仕事をもらうのが当面の目標です!
コミックのヴァリアントカバーや「スター・ウォーズ セレブレーション」のポスターなどをやってみたいですね。同時にイラストレーションの研鑽を積み、アニメ『ビジョンズ』のようにスター・ウォーズに新しい可能性を持ち込めたらとも考えています。
――最後にファンの皆さんに一言お願いします!
5ヘルスさん:
僕は今回カバーアートを担当しただけですが、全てのスター・ウォーズ コンテンツは多くの人の苦労と情熱によって世に出されています。そしてその作品が日の目を見るための土壌はスター・ウォーズ ファンの皆さんで作り上げていくものでもあると、ファンの一人として思っています。
一人一人が"支点"となり、来たる「セレブレーション ジャパン」に向けて、スター・ウォーズを盛り上げていきましょう!
【商品概要】
『スター・ウォーズ アソーカ』(上下巻)
著者:E.K.ジョンストン
訳者:村上 清幸
判型:四六判 ソフトカバー 上巻216ページ・下巻200ページ
定価:各1,430円(税込)
発売日:2023年6月15日
発行所:株式会社 Gakken
執筆:ジェイK(@StarWarsRenmei)