- 第一話「背教者(The Apostate)」
- 監督:リック・ファミュイワ
- 脚本:ジョン・ファヴロー
- 評価: ★7.7/10(IMDbユーザー評価)
あらすじ
子ども用のヘルメットを制作するアーマラー。彼女率いるマンダロリアンの分派チルドレン・オブ・ザ・ウォッチは、新たな仲間を迎えようとしていた。泉のほとりで、少年は宣誓し、ヘルメットを被る。彼は二度と人前で脱ぐことを許されない。そこに突然巨大なクリーチャーが表れ、あたりは大混乱に。歴戦の戦士たちも、その巨体に圧倒される。
だが、N-1スターファイターに乗ったディン・ジャリンが、プロトン魚雷でクリーチャーを倒す。もちろん、グローグーと一緒。ディンは、帝国に破壊されたマンダロアの地表は汚染されておらず、人が立ち入れるという情報をもたらした。つまり、鉱山の神聖な泉に入り、ヘルメットを脱いだ罪を贖うことも出来るはずで、彼が再び仲間にマンダロリアンだと認められるチャンスはある。
ディンとグローグーだけでは結晶化した惑星マンダロアの地表の探索は困難だ。彼らは古い友人を訪ねるために、惑星ネヴァロに向かった。上級監督官のグリーフ・カルガに歓迎されるディン。グリーフは好待遇で、ディンをこの地に引き留めようとする。海賊を追い払うと、ようやく裏事情を吐露。キャラ・デューンが、モフ・ギデオンを新共和国に渡した功績で特殊部隊に引き抜かれたため、保安官を探しているとのことだった。しかし、ディンは断る。彼の目的は、IG-11だった。
かつてグローグーを守り自爆したIG-11だが、パーツの大部分は残っていた。ディンはその再起動に成功する。しかし、記憶を失ったIG-11は、グローグーを殺そうと暴走。アンゼランのドロイド・スミスに修理してもらおうとするが、記憶回路がないと直せないと告げられる。回路を探す必要が生じ、ディンは惑星を離れた。
すると、さきほど追い払ったゴリアン・シャードの海賊団に絡まれる。相手は5機以上で、しまいには戦艦級の船まで出てきたが、ディンは巧みな操縦技術と、小惑星の地形、そして船に搭載した特別なエンジンで難を逃れる。
惑星カレヴァラのボ=カターンの屋敷。ディンは惑星マンダロアの捜索にあたり、彼女の協力を得ようとしていた。しかし、ボ=カターンにはやる気もなければ、部下もない。ダークセーバーを持ち帰れなかった彼女は人望を失い、かつての部下たちは傭兵として活動しているそうだ。そして、「昔、お前たちは私たちの民を壊滅させた」とチルドレン・オブ・ザ・ウォッチへの憎しみをにじませる。さらに、その”カルト”の教義を信じ、ベスカーの産出地にすぎない泉を求めるディンを「愚か」と罵るのだった。
レビュー
俺たちのマンドーと、グローグーが帰ってきた!ロケットスタートとまでは言わないものの、二人の掛け合いや完成度の高い戦闘シーンが見られて大満足だ。最初のシーンが、実は過去シーンではないというミスリードも面白かった。
第一話となる今回は、今シーズンにおける中長期的な目標が示された回だった。一番大きな目標は、マンダロアの泉に浸かって再び仲間からマンダロリアンと認められること。そのために、IG-11を修理し、ボ=カターンの協力を取り付ける必要がある。だが、IG-11は部品がなく、ボ=カターンもやる気を失っているので、先は長そうだ。
今回、マンダロリアンに関する新情報がいくつかあったので、おさらい。一つ目、チルドレン・オブ・ザ・ウォッチはまだ大勢いる。ネヴァロで虐殺に遭ったが、壊滅したわけではない。二つ目、惑星マンダロアは、帝国による「大粛清」で汚染されたと考えられているため、放棄されている。ボ=カターンが目指す奪還とは、惑星の解放というより、惑星への帰還という意味合いが強そうだ。三つ目、チルドレン・オブ・ザ・ウォッチは帝国による「大粛清」を逃れる際に、他のマンダロリアンの民を虐殺した過去がある。この時に彼らは、マンダロアの衛星コンコーディアに避難していたことが明かされているので、同地でひと悶着あったのだろうか。
ボ=カターンにとって、ディンの属するチルドレン・オブ・ザ・ウォッチは異端で、憎むべき”カルト集団”だ。しかし、ディンはそこを唯一の居場所だと感じている節がある。グローグーが「同胞」を捨てたのに、ディンは「同胞」に拘り、グローグーをもマンダロリアン(チルドレン・オブ・ザ・ウォッチ)にしようと教育している。「背教者」呼ばわりされても、同胞に拘るディンの姿は洗脳を疑ってしまう。
それでも、マンダロア奪還のためには、ボ=カターンとディンは協力しなくてはならない。ボ=カターンにはダークセーバーの持ち主が必要であり、ディンには部下を束ねられるカリスマの持ち主が必要だ(おそらく戦いになるだろうし)。どのように対立を乗り越えていくのかに注目だ。
豆知識
時系列
制作総指揮のジョン・ファヴローは、「観客が経験したのと同じくらい劇中でも時間が進んでいる」と発言していた。つまり、シーズン3は、シーズン1から数年は経過している。
紋章
少年をマンダロリアンの一員として迎える儀式で掲げられていた桜のような紋章は、ヴィズラ氏族の家紋。パズ・ヴィズラとの絆も強調されていたので、少年はヴィズラ氏族の関係者かもしれない。また、同じ場面ではエルダー氏族やマンダロリアン・クルセーダーの紋章も確認できる。
少年マンダロリアン役の俳優
ヘルメットの音
少年がマンダロリアンのヘルメットを被ったときの効果音は、ヴェイダーがヘルメットを被るときの音に酷似していた。不気味な類似だ。
パーギル
グローグーがハイパースペース内で目撃したのは、巨大生物パーギルの影。ハイパースペースを泳ぎ回れる彼らは、『反乱者たち』に登場し、エズラやスローンを未知領域へと連れて行った。今年公開のドラマ『アソーカ』にエズラやスローンが登場する伏線か。
キャラ・デューン
シーズン2まで惑星ネヴァロの保安官として登場していたキャラ・デューンは、新共和国の特殊部隊に引き抜かれたという体で、ドラマから退場した。実は、これは”問題発言”でキャラ・デューン役のジーナ・カラーノが解雇されたという裏事情のため。
アンゼラン
IG-11を修理するためにグリーフ・カルガは、アンゼラン種族のドロイド・スミスを頼った。アンゼランといえば、『スカイウォーカーの夜明け』に登場したバブ・フリックの種族。今回登場したアンゼランと、バブに関係性があるかは不明だ。
「プードゥー」
アンゼランは、IG-11の状態を「プードゥー」だと語った。この言葉はハット語で、軽い罵倒や怒りの感嘆詞として使われていた。直前に「ハット語は出来るか?」とディンに聞かれたため、この返答をしたのだと思われる。
「ダンク・ファリック」
『マンダロリアン』ではおなじみの怒りを表す表現、ダンク・ファリックも登場。使われ方から、こちらはFワードに相当すると思われる。
カレヴァラ、サンダーリ
マンダロリアン星系の地名が複数登場した。カレヴァラとは『クローン・ウォーズ』で名前が登場した惑星で、サティーン・クライズ公爵の母星だ。また、サンダーリとは惑星マンダロアにあるドーム型都市。こちらも『クローン・ウォーズ』に登場し、サティーン率いる新マンダロリアン政府の首都になっていた。