- 第七話「宣言(Announcement)」
- 監督:ベンジャミン・キャロン
- 脚本:ステファン・シフ
- 評価: ★8.3/10(IMDbユーザー評価)
- 前回:第六話「目」
今回第七話は、独立した一話で、前半戦のプロローグ、後半戦のエピローグといった内容だった。ウルフ・ユラーレンや帝国時代のクローン・トルーパー、KXシリーズ・ドロイドが見られるというファン歓喜のサプライズもあったが、偶像劇としてもこの上ない出来栄えになっている。この人間ドラマに、パルパティーン皇帝も人間として参加してほしいと思うようになってきた。
帝国の締め付け
前回第六話で、ヴェル・サーサ率いる反乱分子たちは犠牲を出しながらも、惑星アルダーニの要塞の襲撃に成功した。この事件は反乱者の「宣言」として銀河中に広まることとなる。
デドラ・ミーロ監視官の所属する帝国保安局(ISB)は、迅速な報復を決定した。監視官たちの前には、保安局の重鎮のウルフ・ユラーレンが表れ、パルパティーン皇帝の意志に基づき、ISBが銀河中を厳しく統率すると宣言した。デドラは、この帝国の行動が反乱者たちの望んだ結果なのでは、と危惧する。
アルダーニ事件の黒幕ルーセン・レイエルは、この結果に満足し、ほくそ笑む。同士であるモン・モスマ議員に問い詰められるが、「恐怖と苦痛で人々が立ち上がるように促すべきだ」と持論を展開する。人々の生活を第一に考えるモスマとは大きな思想の乖離がある。だが、『ローグ・ワン』でみたように、「大義に基づいた反乱」でも、きれいごとだけでは進まない。
第七話にして、ようやくストームトルーパーやスターデストロイヤーが登場した。帝国が銀河への締め付けを行っていると印象付けられる。しかし、これは反発を招く行動であり、まんまとルーセンの策にハマっていることになる。だが、帝国側も無能ではない。男尊女卑社会の中で不当な扱いを受けていたミーロだが、その「反乱組織はこちらが引いた境界に囚われない」という主張を上司の中佐は受け入れる。今後、ミーロはさらに活躍することになるだろう。
今作では、帝国の独裁体制の失敗が描かれている。それは、パルパティーン皇帝の失敗でもある。今まで黒幕として活躍してきたのはパルパティーンだが、今作の黒幕は、まだ底の知れない反乱者ルーセン・レイエルだ。共通点が多い二人。その対決が、今作では描かれるだろうか。
モン・モスマのイメージ
モン・モスマは自宅のパーティで旧友の銀行家テイ・コルマと会話を交わす。彼が信用に足るか迷っていたが、その「少し過激な考えを持っている」という言葉を聞き、秘密を打ち明ける。テイを慈善団体のトップに据えることで、反乱の資金を動かそうという魂胆だ。
モスマは、自分が人々に「優柔不断で無能なイラつく理想主義者の女」と思われていると語る。だが、このイメージは全てモスマが作り上げた虚像だった。「パルパティーンのように、石を隠してナイフを付けつける」ために。このイメージは、現実のファンたちが抱いていたものでもあり、ドキッとさせるセリフだ。
モスマの狡猾さに驚く一方で、夫を全く信用せず、彼にすら虚像を見せている姿には疑問を覚える。それが家族として、正しい姿なのだろうか。「私たちは互いを気にかけている」と語る夫の姿は、可哀そうに映る。彼に悪意はないように思うのだが・・・。
さらに、モスマは娘から「いつもママは自分のイメージばかり気にしている」と看破されている。娘の母親への不信感は強い。稀代の英雄モン・モスマと言えども、完璧な超人ではなく、家庭内不和を抱えている一人の人間なのだ。
キャシアンの帰郷と今後
惑星コルサントにて、ヴェルは、ルーセン・レイエルの右腕であるクレヤ・マーキと密会する。クレヤは犠牲者をコマのように扱い、ヴェルの心配にも同調しない。そして、冷たくキャシアンを殺せと言い放つ。「大義」のために、ヴェルは殺人の命令に従わなくてはいけない。『ローグ・ワン』のキャシアンと同じように。
アルダーニの作戦で大金を手に入れたキャシアン・アンドーは、惑星フェリックスに帰還する。そして、義母のマーヴァとB2EMOと共に帝国の手が届かない暖かい惑星へ逃れようとする。だが、マーヴァは決断しようとしない。ひとまず、出発は早朝とし、元カノであるビックス・カリーンの元へと向かう。
ビックスは恋人のティムを殺され、顔に痣まで作っていた。キャシアンを恨んでいてもおかしくないが、それでも彼に「みんながあなたを恨んでいる」と忠告してくれる。だが、キャシアンは「ティムが悪くて、俺は悪くない」と逆ギレ。明らかにクズな言動だ。ビックスの言っていたように「いつも何かのせいにしている」。だが、そんな言動には慣れているのか、ビックスは彼を送り出した。
家に帰っても、マーヴァたちの支度は整っていない。どうしたのかと尋ねると、彼女は「一緒には行かず、頭の中にある理想郷を実現するために反乱を起こすのだ」という。キャシアンは正気の沙汰じゃないと反対する。だが、マーヴァは、アルダーニ事件の「宣言」から勇気をもらっていた。あの「宣言」のおかげで、「夫を帝国に殺されてから13年間近づけなかった通りを、気持ちよく堂々と歩けた」のだそうだ。その気持ちを知り、キャシアンは自分が「傭兵」として携わっていたことを明かせない。
キャシアンはマーヴァと別の道を歩むことを決めた。彼には、新しい生活が待っている。だが、マーヴァは「いずれ愛による行動だとわかり、お前は戻ってくるだろう」と告げる。そんな言葉を後に残し、彼はリゾート地の惑星ニアモスへと行った。一見順風満帆な生活だったが、「宣言」を受けて厳しくなった帝国の支配はこの地でも苛烈で、彼は冤罪で6年収監されることとなった。
この後は、『ローグ・ワン』と似たような展開になりそうだ。ジン・アーソを反乱同盟軍が救い出したように、キャシアンも反乱分子に救い出されるだろう。ルーセンたちに命を狙われている彼を救うのは、予告編に登場したソウ・ゲレラかもしれない。
豆知識
ウルフ・ユラーレン大佐
ISBの大佐として登場したのは、『クローン・ウォーズ』で提督として活躍していたウルフ・ユラーレン。『EP4/新たなる希望』では、デス・スター内の会議にも参加しており、ヤヴィンの戦いで戦死した。
ジェダイ・テンプル・ガード
古物商ルーセン・レイエルのコレクションの中に、ジェダイ・テンプル・ガードのマスクがある。ジェダイ・テンプル・ガードは、ジェダイ聖堂を警備していた特別なジェダイたちで、アニメ『クローン・ウォーズ』で初登場した。ちなみに、大尋問官は、元テンプル・ガードだ。
コルサントのホログラム
クレヤが通り過ぎた惑星コルサントのホログラムでは、今回惑星ニアモスの会話で登場したピーゾの宣伝と、チェーンコード(身分証)を持ち歩くようにというISBの警告文が映し出されている。
反乱のシンボル
惑星コルサントで、クレヤが足元のシンボルをたどって、ヴェルの居場所を見つけ出すが、そのシンボルは、ドラマ『キャシアン・アンドー』のシンボルに似ている。
エイリアン
モン・モスマの開いたパーティには多くのエイリアンが登場しているが、殆どが『最後のジェダイ』のカント・バイトからの流用。
帝国のクローン・トルーパー
キャシアンの義父クレムは、クローン・トルーパーに殺される。少しわかりにくいが、彼らは帝国に所属していたクローン・トルーパーだ。「共和国万歳」と人々が叫んでいることや、マーヴァの13年前という台詞から判る。
『ローグ・ワン』要素
『ローグ・ワン』で初登場したショア・トルーパーとKXシリーズ・セキュリティ・ドロイドが、しかも海辺で登場する。惑星スカリフの戦いを思い起こさせる。
デジャリック
惑星ニアモスでは、エイリアンがデジャリックをプレイしている。これは、スター・ウォーズ世界のチェスで、『EP4/新たなる希望』のミレニアム・ファルコン内で初登場した。
エイリアンの帝国兵
惑星ニアモスの法廷では、エイリアンのラサーティロが警備を務めている。人間至上主義の帝国では、珍しい。また、このエイリアンは、『スカイウォーカーの夜明け』に初登場した。
マシフ
同じく惑星ニアモスの法廷では、マシフの放し飼いで懲役四か月を言い渡されている者がいる。マシフは、ジオノーシスやタトゥイーンなどの砂漠の惑星に住む爬虫類型のクリーチャーで、『EP2/クローンの攻撃』や『マンダロリアン』に登場した。
リンク
画像は、ドラマ『キャシアン・アンドー』(2022年 Lucasfilm)より引用