この第四話で、さらにシリーズが加速した!登場人物たちを掘り下げつつ、それぞれが向かう道をほのめかし、全体像が見えつつある。また、既存の用語や設定を活用することで、世界に厚みが生まれている。何度も見返したくなる出来栄えだ。細かい描写や豆知識もかなり多かったので、最後まで読んでみて欲しい。
初代”ローグ・ワン”
前回、ルーセン・レイエルの手助けで惑星フェリックスから脱出した主人公のキャシアン・アンドー。反乱活動に加わるように勧誘を受けるが、「反乱は無意味で、俺は好きなことをして生きる」と頑として拒否する。彼は、ミンバンの戦いで帝国軍の実態を目にし、逃げ出した過去があった。
しかし、レイエルは「お前は帝国と戦って死ぬ運命だ」と、キャシアンの未来を見通し、「意味のあることの為に死ぬべきだ」と説得を続ける。結局、前金として五万クレジット相当のカイバー・クリスタルを受け取った彼は、報酬目当てで作戦に参加することになった。しかし、偽名として選んだのは抗議活動中に殺された養父クレムの名前だった。
ひと悶着あった後、ヴェルのチームに加わったキャシアン。帝国の要塞から、わずか七人で資金を盗む無謀な計画に思わず尻込みしてしまう。「アルダーニの目」を通れば成功の確率は高まるとは言え、それでも厳しい作戦だ。しかも、チームの大多数は、突然現れたクレムことキャシアンを良く思っていない。果たしてこの分隊は成功を収められるのだろうか・・・。
少し丁寧にあらすじを述べたが、ここまで読めばわかるだろう。これは、まさしく『ローグ・ワン』だ。養子として活動家に育てられた主人公は、カイバー・クリスタルを所持し、自分の身の安全のためにひとまず反乱分子に協力する。作戦は、帝国の施設に少人数で潜入して盗みを働き、わずかな隙間を縫って、脱出すること。このアルダーニの作戦と、スカリフの戦いには多くの共通点がある。
今は反乱に懐疑的なキャシアン。だが、五年後には過去の自分とそっくりなジン・アーソに対し、反乱の意味を説くことになる。今回のアルダーニの作戦で、彼は周りから影響を受け、反乱者への第一歩を踏み出すことになるだろう。アルダーニの住民のように元々は弾圧された先住民で、さらに養父が殺された過去があることも、彼の改心へと関わってくるだろう。
反乱同盟軍の創設へ
キャシアンをヴェルの元に届けた後、ルーセン・レイエルはコルサントへと舞い戻る。船の中で豪華な装飾品を身に着け、髪型を整え、笑顔を練習する。暗い船内での孤独な笑顔は、なんとも不気味だ。彼には深い闇を感じる。
レイエルの表向きの職業は骨董商。富裕層を中心に幅広い人脈を持つ彼は、民主派の元老院議員モン・モスマと協力して、帝国に対する組織的な反乱運動を行っていた。しかし、監視の目が強化されつつあるモスマは、資金の提供に限界を感じ、新たな人物との協力を模索していた。レイエルはこの考えに反発し、表向きの顔で遠回しに彼女に再考するように促す。笑顔の下で繰り広げられる舌戦。これぞ、大人の政治劇だ。
モスマが仲間に加えたいと考えているのは、劇中で何度もほのめかされたパルチザンの指導者、ソウ・ゲレラだろう。「危険は冒せない」と拒否するレイエル。だが、それは本心からの言葉だろうか。帝国への敵意で行動するレイエルと、あくまでも人々のために行動するモスマは、共通の敵を抱えながらも、別々の方向を向いているように思える。そして、反乱活動が転換点を迎えているのは間違いない。
一方のモン・モスマも個人的な悩みを家庭に抱えている。夫は政治に無頓着で、かつての戦友やモン・モスマの政敵を家に招き、パーティーを楽しもうとしている。帝国を憂慮する彼女を「悪く考えすぎだ」とまで非難するありさま。今作では、モスマの女性としての一面も描かれると予告されてきたが、それは妻としての悩みだったようだ。
エリート帝国保安局
惑星フェリックスでの騒動の後、帝国保安局(ISB)はプリ=モー社の管轄権を廃止し、直接の捜査へと乗り出す。「帝国の医者」を自称する保安局は、帝国の秘密警察だ。反乱の兆候を察知する責務がある。
女性士官デドラ・ミーロは、捜査機関に属していた経験から、組織的な反乱活動が計画されていることを予感する。彼女は、フェリックスで見つかったスターパス・ユニットを調べるため、捜査資料を請求した。しかし、官僚的な縦割りを背景に、男性の同僚は頑なに拒否する。彼は、嫌味を込めて彼女にキャリアについて考えるように告げた。
ならばと、ミーロは上司に自分の正当性を訴えるが、あっさりと拒絶される。先ほどまでキャリアを考えろと促してきた同僚は、今度は彼女がキャリアに囚われていると非難。明らかに軽視されている。上司は、ミーロが女性であるが故に「不公平な高い基準」が設けられていることを認めた。
女性であるレイア姫が活躍できる反乱同盟軍。しかし、帝国は旧態に縛られ、反乱を未然に防げる絶好の機会を逃がしてしまった。それでも、ミーロが諦めることはなさそうだ。不遇な彼女を応援したくなる。
一方、自らの失態に打ちのめされたプリ=モー社の捜査主任シリル・カーンは、コルサントの実家へと帰省する。アパートのドアが開いた途端、炸裂するビンタ。だが、母親からは愛情が見て取れる。主任を留任されたカーンは、これからも反乱分子と向き合わなければならない。だが、この愛情も忘れてはならない。
「悪役」でも同情できる要素があることは、このドラマに深みをもたらしている。デドラ・ミーロも、シリル・カーンも、今後どのような未来を歩むのだろうか。行く末が分かっているキャシアンよりも、彼らに注目したくなる。
豆知識
惑星フォンドア
序盤の船の中のシーンで、キャシアンは「フォンドア・フォードクラフトに乗ったことはあるが、この船が何で動いているか分からない」と語る。惑星フォンドア(Fondor)は、帝国の造船所で有名なコロニー領域の惑星。
ミンバンの戦い
キャシアンは16歳の時に惑星ミンバンの戦いに参加し、コックとして活動していたことが明らかとなった。ミンバンは、映画『ハン・ソロ』でも描かれ、ハンもミンバンの戦いに参加していた。この戦いが同じものかはわからないが、16歳の時に従軍していたという発言から考えると、ハンとキャシアンが同時期に同じ星に居た可能性は高い。
パルチザンとソー・ゲレラ
キャシアンは、ルーセン・レイエルがパルチザンの関係者ではないかと疑う。ヴェルのチームのメンバーも、反乱軍の活動家として、ソー・ゲレラの名前を挙げる。ソーは、アニメ『クローン・ウォーズ』や映画ローグ・ワンに登場したパルチザンの指導者。ジンの養父であり、過激なテロ活動で知られる。
帝国保安局(ISB)
惑星フェリックスでのひと悶着を巡り、帝国の秘密警察ISBが登場した。ISBは、銀河帝国の法執行機関および諜報機関である。エージェント・カラスや、『クローン・ウォーズ』と『EP4/新たなる希望』に登場したユラーレンが所属していた。
保安局が管轄する惑星
帝国保安局の会議では、様々な惑星の名前が登場した。チャム・シンドゥーラ率いるトワイレックの活動家が反乱を企てる惑星ライロス。『マンダロリアン』で登場したアーヴァラ7と同星系だと思われるアーヴァラ6。そして、『ローグ・ワン』に登場した惑星スカリフ。この星には、物資が運ばれていることが判明した。ISBのメンバーも知らないようだが、これはデス・スター建造の動きだ。
カイバー・クリスタルとラカタの帝国
ルーセン・レイエルはキャシアンに、前金として青いカイバー・クリスタルを渡した。カイバー・クリスタルは、ライトセーバーの核やデス・スターのレーザーに使用されたクリスタル。『ローグ・ワン』でも、ジン・アーソがお守りとして所持していた。また、ラカタ種族はレジェンズ(旧設定)の登場した古代の超文明。ジェダイ・オーダーの前身組織との戦いや奴隷の反乱がきっかけで、その帝国は滅亡した。
キャシアンの偽名
キャシアンは、偽名として「クレム」を名乗る。これは前回マーヴァと共にキャシアンを助け出し、後に抗議活動中に殺された養父クレム・アンドーから名前を流用している。
空港での惑星名
シリル・カーンがコルサントの空港に到着したとき、様々な惑星の名前が読み上げられている。そのうちの一つが、後に新共和国の主都となり、スターキラー基地に破壊されることになる惑星ホズニアン・プライム。
惑星コルサントの建物
今作は、イギリス国内でのロケ撮影を行っており、コルサントの建物のいくつかは、実際に存在する建物を再利用している。空港のシーンはMcLaren Technology Centreで、アパートのシーンはロンドンのBrunswick Centre。
ルーセンのコレクション
ルーセン・レイエルのギャラリーでは様々な遺物が展示されている。
マンダロリアンのアーマーの一部、トワイレックのカリコリ、ケル=ドア種族のマスク、ウータパウのこん棒、モーティスの神々の壁画、シス・ホロクロン、ジェダイ・ホロクロンなど。
コレクションのイースターエッグ
上記は、正史内で、設定を持つ小物だが、完全なイースターエッグも見られた。なんと、カーボナイト凍結されたインディ・ジョーンズのムチらしきものが登場!
レジェンズのゲーム『フォース・アンリーシュド』に登場した「スターキラー」のマスクは、鎧として飾られている。
モスマ家のパーティ出席者
モン・モスマの夫は気の利かないことに、彼女の政敵をホームパーティへと招待している。一人は、『EP6/ジェダイの帰還』で皇帝と共に第二デス・スターを訪問したと思われるアース・ダンガー。もう一人は、帝国の設立にも立ち会い、パルパティーン皇帝の愛人とも噂されたスライ・ムーア。また、マス・アミダを指すと思われる「宰相」という言葉も。
惑星ゴーマン
モン・モスマは、上記のメンバーが惑星ゴーマン(Ghorman)の交易ルートを封鎖したことで、民が飢え死にすると主張する。レジェンズ(旧設定)では、ウィルハフ・ターキンが、この地での平和的なデモの上に船を着陸させ、人々を虐殺したことで悪名をとどろかせた。