ドラマ『キャシアン・アンドー』は、三話が同時配信となった。一気に三話も見るのは面倒だという声もあるが、三話で一つのブロックという区切りをしている今作は、第三話でようやく話が動き出すので、この決断は正しかったように思う。今作で活躍するはずのモン・モスマは、まだ登場していないので、第四話も楽しみだ。
- 前々回:第一話の感想・考察・豆知識
幼少期の旅立ちの疑問
前回第二話で女性リーダーが射殺された後、キャス(キャシアン)は独りで墜落した船の中へと入っていく。鏡面に映る自分の顔。突然、キャスは怒り狂い、我を別れて破壊し始める。むき出しになる激しい自己嫌悪。部族の中でも明らかに排斥されていたキャスの過去には、何があったのだろうか。
そこに、廃品回収業者(盗人)のマーヴァ・アンドーとクレム・アンドーがやってくる。マーヴァは「共和国の士官を殺したキャスは、このままでは報復を受ける」と考え、彼を連れて行くことを決めた。
ここで、二つの疑問が。一つ、そもそもこの船は、乗組員のシンボルからして「分離主義者」の船だ。少なくとも今回の出来事で、共和国から報復を受けることにはならない。二つ、そもそも共和国は幼い子どもに報復するような人たちだろうか?ジェダイ率いる共和国軍が非人道的な行為に及ぶ姿は、あまり見たことがない。もっともこれは、共和国を「敵国」とみなす等しているマーヴァの偏見の表れかもしれないが。
キャスの惑星ケナーリでの生活にはまだ謎が多い。妹の捜索がキャシアンの根底にあるので、今後さらに明かされていくだろう。そして、第二話の感想でも触れたが、ケナーリからの旅立ちの出来事にも何か裏がありそうだ。
指導者ルーセン・レイエルとの出会い
ビックスの取引相手のルーセン・レイエルが、ようやく街に到着する。杖を持ち歩き、ローブをたなびかせながら、堂々と街を進む。交渉力にも長けていて、金より先に装置を確認し、キャシアンの手口もあっさりと聞き出す。銃を突きつけられても動じない。
さらには、キャシアンの父親がリックス通りで絞首刑にされたことまで知っていた。やはり、この男、只者ではない。ちなみに、混乱しそうになるが、ここで殺された「父親」は、先住民族の「実父」ではなく、「義父」のクレムのことだろう。リックス通りは、二人が立っている倉庫のすぐ近くの通りの名前だと劇中で明かされていた。
彼は、キャシアンに二つのルールを教える。ルールその①「制御できないものは持つな」。ルールその②「出口を確保しろ」。ルーセンは、第二話の時点で、既にこのルール②を実践していた。バス内で情報を聞き出すことで、倉庫の出口だけでなく、スピーダーでの脱出も視野に入れていた。
このルーセン・レイエルは、帝国に対する憎悪をむき出しにしている。とても聖人には思えない。キャシアン・アンドーが、汚い仕事に手を染めるきっかけを与えそうだ。
渋いバトルと青年期の旅立ち
第三話にして、ようやくドンパチの時間!しかし、本編同様に、バトルも渋い。敵のモブも粘るし、斬新なSFチックな兵器も登場しない銃撃戦だ。だが、だからこそ、リアルさがある。そして、ゆっくりとしたストーリーと、鳴り響いていた不快な金属音を吹き飛ばすような爆発と、敵を出し抜く脱出には、確かな爽快感を覚えた。
この三話で、三人の青年が新たな人生へと足を踏み入れた。二番目の故郷と二番目の母親を後に残し、旅立つキャシアン・アンドー。キャシアンを優先したことで、恋人を失ったビックス・カリーン。キャシアンを追う中で、本物の戦場を目撃してしまったシリル・カーン。
このドラマのタイトルは、「キャシアン・アンドー」だが、キャシアンを中心に、彼から影響を受けた様々な人間模様が描かれている。彼ら三人に、今後もスポットが当たるだろう。
豆知識
キャシアンのブラスター
キャシアン・アンドーが携帯しているブラスターは、K-16ブライヤー・ピストルだと思われる。この武器は、レジェンズで活躍したニュー・ジェダイ・オーダーのジェダイ、カイル・カターンが愛用していた。
おなじみのエイリアン
三話に渡って、各所で見たことのあるエイリアンが登場していた。主に、映画で作られたパペットが再利用されていたようだ。これは、ファンサービスだけでなく、予算削減の意味合いも強い。最も印象に残るのは、『スカイウォーカーの夜明け』から登場したアキ=アキか。
レンガ
キャシアンとルーセンは、レンガ造りの倉庫で取引を行った。レンガは、惑星フェリックスのいたるところで使われている。スター・ウォーズ世界になじまないという声もあるが、すでに惑星ナブー等で登場済みだ。今作は、イギリス国内でのみロケを行っているため、現実世界の建物の使い回しも多い。
鍋叩き抗議
第三話で、惑星フェリックスの住民は、企業部隊に対して金属音を出して威嚇する。現実世界でも、これに類似した鍋叩き抗議(Cacerolazo)が、広く行われている。フランスで生まれたこの抗議法は、アルジェリア独立運動でも用いられ、現在は中南米のラテン文化として定着している。
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画像は、ドラマ『キャシアン・アンドー』(2022年 Lucasfilm)より引用