前回に引き続き、ドラマ『キャシアン・アンドー』第二話の考察・感想・豆知識について。今回もゆっくりとしたペースで話が進んでいくが、話の細部まで緻密に計算され、伏線が張られている。また、ファンサービスはないとされていた今作だが、随所にイースターエッグが見られた。
「おとぎ話」ではない旅立ちのきっかけ
前回第一話でプリ=モー社の警備員を殺害してしまったことで、キャシアン・アンドーは、指名手配される。後に反乱軍の英雄となる男の旅立ちは、本人のミスという劇的とは言えない出来事で引き起こされた。
しかも、自分がケナーリ出身という秘密を親しい女性に漏らしてしまっていた。秘密を知る女性の一人だったビックスは彼に協力するが、その姿勢がかえって今のビックスの恋人、ティムの嫉妬心を煽る。ティムは酒を煽ったうえで密告するが、罪悪感に苛まれており、責める気持ちにはなれない。
キャシアンの冒険の始まりは「自分のミス」であり、「助けを求める他者の訪問」で旅を始めたスカイウォーカー・サーガの主人公とは、えらい違いだ。これが、このドラマが「おとぎ話」ではなく、現実的な「大人向けスター・ウォーズ」である所以だ。
腐敗した帝国の最前線部隊
殺人犯のキャシアン・アンドーを追うのは、プリ=モー社の戦闘部隊。おなじみのストームトルーパーたちよりも緩い雰囲気で、上官すら軽視している。隊長のモスクもふくよかな体で、前線で戦ってきたとは思えない。
だが、モスクは声高に「企業の戦闘部隊は帝国の最前線。反乱の芽を摘む役割がある」と宣言する。実際、帝国の支配は辺境までは完全に及ばず、企業に委任されているので、間違ってはいない。
だからこそ、帝国の腐敗が、この最前線部隊から見て取れる。下っ端は賄賂をせびり、部長は問題をもみ消そうとし、隊長は脂肪を蓄え、主任は経験がない。最前線という名の周縁にすら、腐敗が進行している。反乱軍に負けるわけである。
惑星ケナーリの情報
キャシアン・アンドーは、キャスとして、惑星ケナーリの先住民族の中で暮らしていた。今回で、惑星の情報がいくつか明らかになった。
まず、部族が行っていた「狩り」は、墜落した船からの廃品回収だった。短い期間で複数回「狩り」が行われていることを考えると、惑星ケナーリはクローン大戦の戦場で、いくつも船が墜落していたのだろう。そして、描写から、鉱山を巡る戦いだったことが推察できる。
帝国期のデータベースによると、「帝国の鉱山事故の後に全員死亡し、放棄された」そうだ。だが、この情報を鵜呑みにして良いのかは、わからない。帝国は、『ローグ・ワン』の衛星ジェダの破壊を鉱山事故として処理していた。今回もおなじみの隠蔽かもしれない。事実、防毒マスクの外れた船の乗組員たちは、有毒ガスかウイルスかに体を蝕まれていた。
また、部族には若者しかいないのも、伏線だろう。大人が虐殺されたとか、大人は鉱山の垂れ流す毒に耐えられなかったとか、クローン大戦の負の部分が今後明かされそうだ。キャシアン・アンドーが語った「6歳の頃からこの戦いに参加していた」という話の真意がようやくわかる。
豆知識
おなじみの船たち
惑星フェリックスの船着き場に置いてあった船たちは、どれもスター・ウォーズに登場してきたおなじみの船だった。詳細は、画像にて。(元ツイ)
フェリックスの解体作業所
惑星フェリックスでは、共和国時代の軍艦の解体が行われている。ゲーム『フォールン・オーダー』の惑星ブラッカでも同様の作業が行われており、同じ型の空飛ぶクレーンが見られた。
Caf
ビックスと共に朝を迎えたティムは、彼女にカフ(Caf)を飲まないかと問いかける。カフとは、スター・ウォーズ世界におけるコーヒーのことだ。
バンサ
キャシアン・アンドーの部屋には、ケナーリ時代に持っていた吹き矢のほかに、タトゥイーンのクリーチャー、バンサの縫いぐるみが置いてある。
堕ちた船の乗組員
墜落した船の乗組員たちの服には、独立星系連合(分離主義者)のシンボルがついていた。墜落した船は、独立星系連合の船のようだ。
ティム役のジェームズ・マクアードル
ビックスの恋人のティムを演じるジェームズ・マクアードルは、実は『フォースの覚醒』にカメオ出演していた。スターキラー基地を攻撃するレジスタンスのパイロット、ニヴ・レックを演じている。