退役クローン兵
ひげ姿のテムエラ・モリソンはレア! |
テムエラ・モリソンがまさかのカメオ出演!その役柄は、ベトナム戦争の帰還兵を思わせる、退役したクローン・トルーパーだった。今後も、テムエラ・モリソンがクローンを演じる機会は、さらにありそうだ。キャプテン・レックスや、コマンダー・コーディの登場が待ち望まれる。
このクローン兵は、ヘルメットの色からして、ジェダイ聖堂の襲撃にも参加した第501軍団の一員だったようだ。かつてはエリート兵士だった彼も、今では国から見捨てられ、住む場所を失っている。ジェダイを“裏切った”彼らも、制御チップによって強制されただけで、実は被害者だったのだ。
アニメ『クローン・ウォーズ』にて、クローン兵の人間性とジェダイとの絆を描いたうえでの今回の描写は、納得がいくものだった。オビ=ワンは、子どもたちを殺した仇であるが、かつての戦友でもある彼に同情し、お金を恵む。クローン大戦での勝者は、パルパティーンだけだったという悲惨さがよく分かる一場面だった。
ヴェイダー(アナキン)でさえも、ある意味では被害者だ。そして、オビ=ワンにとっては、今回登場したクローンと同じように、アナキンも、仇であり、戦友だ。”戦友”に情けを見せる今回の演出は、EP6でオビ=ワンがアナキンを赦し、隣に立つシーンに繋がるだろう。個人的には、コマンダー・コーディとの和解も見てみたいが、今回のドラマに登場するだろうか?
ジェダイを騙る詐欺師ハジャ
彼の”手品”はバレバレで、面白かった |
パート2で最も印象深かったのは、詐欺師のハジャ・エストリーだ。手品を駆使し、ジェダイを騙って人からお金を巻き上げる様には、オビ=ワンと同様に、多くの観客が反感を抱いただろう。
だが、実際の彼は根っからの悪人というわけではなかった。「お金は大好き」だが、ジェダイに強い憧れを抱く一人だった。結果的には二人の居所を漏らしてしまうものの、命を賭けてオビ=ワンを助けようとし、彼を助けてくれる仲間の居場所を告げた。悪人でも改心できるというのは、ハン・ソロから続くスター・ウォーズのテーマの一つだ。
このハジャの登場により、改めて、ジェダイという英雄の存在感が強調されていた。ジェダイを騙れば、多くの人間から信頼を得られる。そして、ジェダイのオビ=ワンだと判れば、詐欺師すらも憧れを覚え、改心する。プリクエル三部作(EP1~EP6)時代の作品では批判的な文脈に置かれることが多いが、やはり、ジェダイとは、人々に希望を与える英雄なのだ。その希望の灯をオビ=ワンは途絶えさせてはならない。
リーヴァの暴走
大尋問官が死ぬはずがないので、思わずこのシーンで笑った |
リーヴァは、前回に引き続き、今回も大尋問官を含めた他の尋問官と対立している。どうやら、リーヴァは周りの尋問官から見下されている現状を覆すために、オビ=ワンを差し出し、ヴェイダーに取り入ろうとしているようだ。
大尋問官は、リーヴァに対し、「我々の中で最も劣る、卑しい生まれ」で、「どぶ臭さを隠すことは出来ない」と罵る。元ジェダイで構成される尋問官たちの共通認識で「卑しい」とされているということは、ジェダイの考えに基づいて、見下されているはずだ。たとえば、リーヴァはパダワンにもなれなかった落ちこぼれなのかもしれない。見下される人間を作ってしまったジェダイ・オーダーのシステムの問題点がこれから明らかになるだろうか。
そして、終盤、リーヴァは大尋問官を“刺し殺した”。クワイ=ガンも腹を刺されて死んだので、少なくとも死にかけているのは間違いないだろう。リーヴァの暴走は、とうとう仲間にすら危害を加えた。彼女はこれから、どこへ向かっていくのだろうか。
なお、時系列的には後になるアニメ『反乱者たち』で、大尋問官は活躍している。大尋問官はこれから“生き返る”。のちに彼は、ヴェイダーを引き合いに出し、「死よりも恐ろしいことがある」と述べていたが、これは、今回の経験を基にした発言かもしれない。
オビ=ワンとレイア
子どもに手を焼くオビ=ワンは、もっと見たい |
EP4では見られなかったオビ=ワンとレイアの絡みを見ることが出来た。これで、EP4で、「ベンが助けに来た」と知ったレイアが大喜びしている理由が分かった。(今後、ベンの本名がオビ=ワンだと確信する場面もあるだろう。既に気づいていそうだが)
皮肉屋のレイアが、皮肉屋のオビ=ワンに突っかかっているところは、ほほえましく、面白かった。偉そうに講釈を垂れるレイアに「10歳らしくない」と返すオビ=ワン。二人のコンビネーションはなかなかだ。
この二人は、二人とも自分の立ち位置を見失いつつある。オビ=ワンはジェダイとしての道を見失い、レイアはオーガナとしての生き方に疑問を抱いている。レイア曰く、「ジェダイらしくない」オビ=ワンと、姫ではなく「ただのレイア」であるレイア。
ここで、レイアは「ベン」に助けを求める |
今回、オビ=ワンは再びジェダイとして歩み始めた。レイアが落ちそうになり、彼はとっさにフォースを使い、助け出した。そして、レイアからもジェダイとして認められた。次は、レイアの番だ。前回、自分がオーガナではないと感じ、議員になりたくないと言っていた彼女は、オビ=ワンとの冒険を通じ、どのような立ち位置を見出すのだろうか。
「彼女を思い出す」
意図が分からなくなるので、サティーンと考えるのは難しいような |
勇敢で、頑固なレイアを見て、オビ=ワンは「彼女」を思い出す。明示されてはいないが、文脈的に考えて、この彼女は、レイアの母パドメのことだろう。レイアは、将来、母パドメの才能を受け継いで元老院議員となる。
このときのオビ=ワンの台詞が興味深い。「彼女」が死んだ話に対して、レイアが「I'm sorry」とお悔やみを言うと、オビ=ワンは「Me too」と返す。この台詞では、オビ=ワンも「彼女」の死を残念に思っていることが強調されている。ただ感謝の言葉を返すのではなく、同じ悲しみを共有しようとしたのは、パドメが自分だけの身内ではなく、レイアの身内でもあるからだろう。
レイアは、これからこの話が、母パドメの話だったと気づくかもしれない。そうなれば、EP6のレイアの「母のことを覚えている」という台詞の矛盾が解消されるだろう。
アナキンの生存を知るオビ=ワン
ユアン・マクレガーの名演が光る |
物語終盤、オビ=ワンは衝撃の事実を知ることとなる。自分が殺したと思っていたダース・ヴェイダー(アナキン)が生き延びていたのだ。彼は隠遁していたこともあり、ヴェイダー卿の名前を耳にする機会がなかったようだ。
オビ=ワンは、恐怖と悲しみを覚える。だが、どこか淡い希望を抱いているのではないだろうか。口からとっさに漏れ出た言葉は「アナキン」だ。オビ=ワンは、ヴェイダーの中にアナキンが生きている、とまだ信じているように思われる。EP4の「アナキンはヴェイダーに殺された」や、EP6の「ヴェイダーは人間というより機械だ」という考えからは程遠い。
オビ=ワンが出来なかったことをルークは成し遂げる |
EP6で、ヴェイダーはルークに「かつてオビ=ワンも、私の中に善の心が残っていると考えていた」と語っている。EP3ではそのような描写がないので、この台詞は、長い間矛盾だと言われてきた。しかし、このドラマで、オビ=ワンが、残った善の心、“アナキン”と対話しようとする場面があれば、矛盾とは言われなくなる。
豆知識
ダイユ
今回、オビ=ワンがレイア救出のために向かった惑星の名前は、ダイユ。このドラマが初登場となる。香港をイメージしてデザインされた惑星だ。
スパイス
女性が売りつけようとしてくるスパイス(麻薬)の名前は、グリッタースティムやケッセル・スパイス。どちらも『ハン・ソロ』に登場した惑星ケッセル産のスパイスだ。グリッタースティムは、レジェンズの小説『ジェダイの継承者』が初出。
ユアン・マクレガーの娘
『フル・ハウス』に出演したこともある |
スパイスを売ろうとしてくる女性は、ユアン・マクレガーの実の娘。「私もかつては誰かの娘だった」と実の娘から言われる気持ちは・・・?笑
毎回、愛が溢れてしまい、かなりの文量に・・・。それぐらい面白く、味わい深い!
- パート1
- パート2(ここ)
- パート3
- パート4
- パート5
- パート6
画像は、ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』(2022年 Lucasfilm)より引用